中国国有自動車大手の北京汽車集団の傘下企業で、大型トラックなど商用車を主力にする福田汽車は、7月23日、2021年1~6月期の決算報告を開示した。そのなかで同社は、関連会社である「宝沃汽車」の経営不振による減損損失が、税引き前利益に4億9000万元(約83億5000万円)のマイナスをもたらしたと明らかにした。
宝沃汽車の社名の由来は、1961年に破産したドイツの自動車ブランド「ボルクヴァルト」である。2014年に福田汽車は500万ユーロ(約6億4980万円)でボルクヴァルトのブランド利用権を買い取り、2016年に宝沃汽車を設立。福田汽車の乗用車技術をベースに開発した数種類のモデルを発売したが、販売はまったく振るわなかった。
2018年に福田汽車は宝沃汽車の不振のあおりを受け、純損益が約36億元(約613億4400万円)の赤字に転落した。同年10月、福田汽車は(子会社の損失が親会社の連結決算に及ぼす影響を軽減するために)宝沃汽車の発行済み株式の67%を競売にかけて手放した。
その株式を取得したのは、当時M&A(買収・合併)で勢力を拡大していた「神州系」と呼ばれる新興企業グループを率いる陸正耀氏の関連会社だった。ところが、神州系は資金ショートに陥って株式の取得代金を支払えなくなり、福田汽車の財務をさらに圧迫する結果になった。
未収金の残高にはさらなる減損リスク
福田汽車には、宝沃汽車に関連する資金の焦げ付きが主に2つある。1つ目は神州系から回収不能となっている67%の株式の譲渡代金、2つ目は福田汽車から宝沃汽車への貸付金で、合計約82億元(約1397億2800万円)に上る。福田汽車が2020年4月に開示した情報によれば、その時点で株式譲渡代金のうち14億8000万元(約252億1900万円)が未回収であり、貸付金については未返済分の支払期限を延長していた。
宝沃汽車関連の未収金の残高には、今後さらなる減損リスクがある。2021年6月30日時点の財務諸表には、株式譲渡の未回収金が時価評価の減損を折り込んでも10億1600万元(約173億1300万円)、宝沃汽車への貸付金が同じく減損を折り込んでも13億6600万元(約232億7700万円)、それぞれ計上されている。
目下の経営状況からみると、宝沃汽車が苦況を自力で抜け出すのは難しい。宝沃汽車が北京市の環境保護局に提出した文書によれば、2020年2月から2021年6月末までの期間、宝沃汽車の工場はまったく稼働していなかった。
(財新記者:安麗敏)
※原文の配信は7月24日
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