スウェーデンの乗用車メーカーのボルボ・カーは、中国の中堅自動車メーカー、吉利汽車(ジーリー)の親会社である吉利控股集団から、両社が折半出資する合弁会社の吉利側の株式を買い取る。中国におけるボルボの製造、研究開発、販売の各事業を整理統合するのが狙いとしている。ボルボの中国法人が7月21日に明らかにした。
ボルボ中国法人によれば、黒竜江省の製造会社や上海の研究開発会社などの株式を買い取ることで、吉利控股集団と合意した。2022年に中国政府が自動車産業の外資出資規制を撤廃した後に手続きに着手し、2023年に買収を完了させる計画だ。
中国政府はこれまで、外資系自動車メーカーが中国で乗用車を現地生産する場合に、中国メーカーとの合弁を義務づけてきた。さらに、合弁会社への外資側の出資比率を50%以下に制限している。ボルボは2010年に吉利控股集団に買収されて「100%中国資本」の会社になったが、中国での現地生産にあたっては(本社登記地がスウェーデンであるため)外資とみなされ、中国政府の規制対象になっていた。
スウェーデンでの上場への布石か
しかし2018年、中国政府は自動車産業への外資の出資規制を段階的に緩和し、2022年には規制を全廃すると発表した。これを受けて、複数の外資系メーカーが中国の合弁会社の持ち株比率を引き上げたり、全額出資に切り替えたりする計画を公表している。
こうした動きの背景には、合弁会社の経営に対する外資側の発言権を高めるとともに、(出資比率を引き上げて決算の連結対象にすることで)親会社の利益に占める中国事業の貢献度を引き上げる狙いがある。だがボルボの場合、それは必ずしも当てはまらない。同社にとって吉利控股集団は中国事業の合弁相手であると同時に、親会社でもあるからだ。
ではなぜ、ボルボはこのタイミングで中国合弁を完全子会社化するのか。自動車業界には、ボルボと吉利控股集団が(中国政府の規制で複雑化していた)合弁会社の所有関係を整理することで、ボルボの上場を準備しているとの見方がある。実際に2021年5月、ボルボはスウェーデンでのIPO(新規公開株式)を検討中であることを明らかにしていた。
(財新記者:安麗敏)
※原文の配信は7月22日
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