70代でスタートアップに再入社した80歳の生き方 80歳・現役エンジニアが生涯夢中を貫けるワケ
2000年の定年退職後は、現役時代の同僚の誘いで、マレーシアのセランゴール州政府の技術者育成プロジェクトにコンサルタント兼講師として携わり、約10年間マレーシアと日本を行ったり来たり。時には年間の滞在が延べ10か月を超えることもありました。ハードな日々でしたが、若手の技術者がぐんぐん成長していくことにやりがいを覚えたものです。
マレーシアのプロジェクトが終わった時は70歳を超えていたので、少し休養することに。ただ、技術から完全には離れられず、趣味と実益を兼ねてWeb技術を学び、ホームページ制作やネットショップ運営などの仕事を請負っていました。
でも3年ほど経つと、そんな状況に物足りなさを感じるようになって。これまでずっと積み上げてきたアナログ技術や国内外での貴重な経験を活かさないのはもったいない。大げさに言えば社会の損失じゃないか、なんてかっこつけたことを思ったりしてね。
それで真剣に仕事を探し始めて、シニア向けの求人サイト『シニアモード』でピンときたのが、フォトシンスでした。応募内容に「若い会社で経験が不足している」とあったので自分の実務経験を活かせると思ったし、マレーシアで若い人と仕事をした経験から、若くて元気のある会社で働きたかったんですよ。
当時のフォトシンスは創業直後で、五反田のマンションの事務所を訪ねると、若手のエンジニアが思いを一つにして新たな市場の開拓に果敢にチャレンジしている姿がありました。その意気込みや創業メンバーの人柄に惹かれて入社を希望、技術アドバイザーとして採用となったのが2014年秋のことです。
現在は、回路技術のアドバイザー業務に加えて、回路設計や評価、トラブルシューティングなど、関連技術の実務全般も担っています。若い技術者とあれこれと討論したり、技術を使ってさまざまな課題を解決したりするのは面白いですね。この取材の後もはんだ付けや測定器を使った簡単な実験をする予定です。
夢中になれる仕事は自分で創り出してきた
エンジニアとして働き始めて約60年が経ちましたが、仕事はますます楽しいね。
それに、私はこれまでの仕事人生を振り返った時に、「つまらないな」とか「飽きたな」って思ったことは一度もないんですよ。ずっと楽しくて、夢中なんです。そういうと、驚かれるんですけどね。
どうしてそんなふうにいられるのかっていったら、やっぱり好きなこと、得意なことを仕事にしたからでしょうね。とにかく技術、中でもアナログ技術が好きなんです。