あなたが「ぬか床」をダメにしてしまう本当の理由 「ズボラ」「意志が弱い」は関係ない意外な真実

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買わない、お金を使わないっていうと、当然のごとく「我慢」を連想する人が圧倒的に多いけれど、買わないことで人生の基本を取り戻した今の私から見れば、「買う生活」をしている人のほうが、よほど何かを我慢している人のように思える。

正直言うと、その我慢の先に何があるのかもよくわからない。ただひたすら我慢する人。それはもはやある種の修行のようにも思える。

そう改めて考えると、お金を使うことが幸せというのは、ただの「一つの価値観」、正直に言えば「あまりにも狭すぎる価値観」、さらに言えば「マニアックな価値観」にすぎないんじゃないだろうかと思えてならない今日この頃なのである。

ぬか床を冷蔵庫に入れてはいけない理由

ちなみにですね、ぬか床をダメにしない方策として、現代の「常識」になっているのが、ぬか床を「冷蔵庫に入れる」という方法である。

確かにこれだと菌が冬眠状態になるので、多少混ぜるのを忘れたとてダメにするリスクが減るといえば減る。

しかし当然のことながら、冬眠状態の菌はうまく働いてくれるはずもなく、美味しいぬか漬けを作ろうと思えば明らかにマイナス。つまりは、菌様に働いて欲しいんだか働いてほしくないんだか、一体どっちなんだー! と、私は菌様に代わって叫びたい。

しかもこれをやってしまうとですね、「ちょっとくらい混ぜなくても大丈夫」ってことになり、結局「ちょっと」をはるかに超えてどんどん混ぜなくなる。で、冬眠の菌はさらに弱って美味しいぬか漬けはどんどん遠ざかり、となるとぬか床への愛も興味も失せて、ますます混ぜなくなり……。

私の知る限り、相当に多くの人がこのような道筋をたどってぬか床をダメにした経験を持っている。つまりは大して美味しくないぬか漬けしか食べられなかったうえに、結局はぬか床をダメにしたという二重のイヤな思い出だけが残る。となれば当然、以後の人生を死ぬまでぬか床と無縁に生きることになるのである。

買う生活、やはりどうやっても敗れたり、なのであった。 

稲垣 えみ子 フリーランサー

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いながき えみこ / Emiko Inagaki

1965年生まれ。一橋大を卒業後、朝日新聞社に入社し、大阪社会部、週刊朝日編集部などを経て論説委員、編集委員をつとめる。東日本大震災を機に始めた超節電生活などを綴ったアフロヘアーの写真入りコラムが注目を集め、「報道ステーション」「情熱大陸」などのテレビ番組に出演するが、2016年に50歳で退社。以後は築50年のワンルームマンションで、夫なし・冷蔵庫なし・定職なしの「楽しく閉じていく人生」を追求中。著書に『魂の退社』『人生はどこでもドア』(以上、東洋経済新報社)「もうレシピ本はいらない」(マガジンハウス)など。

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