そうなのです。皆様どこかでお聞きになったことがあると思うが、ぬか床ってやつは定期的に混ぜてやらないと、余計な菌が増殖して具合が悪くなってしまうのだ。
2日3日忘れたくらいではどうってことないが、1週間2週間となると、ふっくらしていたぬか床がぺったり病的な感じになってくる。
それでも私の経験では直ちに「死亡」ということにはならず、心を入れ替えて混ぜてやれば菌様たちはブツブツ言いながらも徐々にちゃんと立ち直ってくださるんだが、まあできることなら1日に1分程度をぬか床のために割いてやることが望ましい。
そうたった1日1分だよ! それさえやれば1年365日いつでもおかず一品が保証されるとなれば、誠にお安い御用ではないか。
でもこれがね、言うほど簡単じゃない。
確かに手は匂うし汚れるし、たった1分でも結構気合いが必要なんだよね。しかもそれが毎日となればついサボりたくなって、いったんサボると弱ったぬか床を見るのが怖くなり、さらに手が遠のき、となればさらに恐ろしさが募り……という魔のスパイラルに陥って、あとはもう真っ逆さまに取り返しのつかぬ悲劇へと突入していくのであります。
実を言うと、私もかつて、何度もぬか床を集中治療室入りレベルまで追い込んだことがある。かなりの期間ほったらかしてしまい、エエイこんなことじゃいかんと、晩酌を終えた至福ののんびりタイムに鋼鉄の意志を総動員してすっくと立ち上がり、重いぬか床容器を引っ張り出して混ぜ混ぜすることでなんとか生き長らえさせてきたのであった。
つまりはですね、簡単だよどうってことないよというのは、1日1分割けばいいという点においては嘘じゃない。嘘じゃないんだが、現実にこれが簡単にできるかというと、わが身を振り返れば真っ赤な嘘である。どうってことないどころか、どうってことありまくりである。正直に言ってかなり大変なんである。
続かないのはズボラだから?
ま、こんなこと今さら私が言わずとも世間様はよーくご存じで、だから「ぬか漬けやってます」というと、ほぼ100%「エライねー」と褒められる。
いやいやエラくもなんともないです慣れちゃえばどうってことないし、と返してきたけれど、確かに私はエライのかもしれない。案外地味にスーパーマンなのかも……なーんて思わないわけじゃなかったんだが、いやこれはそういう話じゃないんだということに最近、ハタと気づいてしまったのだ。
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