――メディアの人たちに言いたいことはありますか。
やはりメディアの多角的な視点を見たいですね。横並びの報道じゃなくて、うちはこういう視点でこの事件を、こういう角度から届けていますと。それはなぜかというと、こういうメッセージを皆さんに考えてもらいたいからです、というステートメントが欲しい。
メディアの皆さんはそれぞれが表現者でもあるわけじゃないですか。だったらそこでメッセージを伝えてほしいというか、なぜそこに光を当てたんですかって問われたときに答えられるようにしてもらいたいと思っています。
一方で、視聴者や読者の情報リテラシーも大切になってくると思います。自分たちが目にするニュースは、これがすべてじゃないというか、切り取った人の視点が入ってるもんなんだという心構えで見る必要性があります。だから一度疑うことも大切だと思います。
この人がこう言っているなら、セカンドオピニオンじゃないですけど、別の人の視点を見てみるとか。そのためにもメディアの多角的な視点が必要だと思うんです。そのためにはやはり力を持っているメディアの方に、矜持を示してもらいたいなと思います。
日芸で教える2人の監督がプロデューサーに
――本作には映画監督の片渕須直監督と、松島哲也監督がプロデューサーとして参加していますが、このあたりの経緯を教えてください。
元々僕が片渕監督とつながっていたわけではなくて、僕が日本大学芸術学部(日芸)映画学科の3年生のときに、シナリオ教えてくれていたのが松島哲也監督だったということです。僕にとってはその出会いがすべてでした。僕はこの脚本は、めちゃくちゃ頑張って書いたんですけど、その礎になったのはその松島監督のシナリオの授業だったと思っているんです。松島先生は褒めて伸ばすのがものすごく上手い方なんです。
卒業後は助監督を続け、大学には、「錦を飾るまでは戻れない」という思いがあってしばらく訪れることはありませんでした。しかし、それから『かぞくへ』が東京国際映画祭で上映されることになったので、松島先生に連絡をして、ポスターを持参して訪れた。そうしたらものすごく喜んでいただき、学校にも飾ってくれたんです。
さらに松島監督は日芸の同期だった片渕監督にも伝えてくださった。それで片渕監督が私の映画の舞台あいさつに来てくださることになったというわけです。
――そこで縁ができたと。
そうですね。上映が終わったときに松島先生から「2作目はどうするんだ」と言われたので、「実はもう脚本はできているんです」ということで読んでいただいた。面白いと言っていただくと同時に、「(制作費に)いくらかかるんだと」と。「1000万円ぐらいはかけたい。『かぞくへ』ではギャラを払えなかったんで、今度はきちんとギャラも払いたい」という話をしたらと言ったら「わかった。ちょっと考える」と言ってくれたんです。
それからしばらくしてから先生に呼ばれて。「俺と片渕が合わせていくらか出すから、それでいいか」ということで、融資をしていただきました。
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