幸せを求めるほど欲望を募らせる人が陥る悪循環 「僧侶の意識=モンク思考」が悩める人を救う

拡大
縮小

つまり、友人のアドバイス、ちょっとした親切、チャンス、教訓、幸せな瞬間の記憶など、あらゆるものに対する感謝の気持ちで1日をスタートさせれば、障害物ではなく、チャンスに出合う可能性が高くなる。それが、成長への新たな道につながっていくということだ。

感謝と聞くと、ちょっと気恥ずかしく感じられるかもしれない。しかし、感謝は心の健康、自己認識、人間関係を改善し、充実感を高めることが研究で判明しているのだという。

たとえば日記を使った研究で、一方のグループには「ありがたい」と感じた出来事を記録させ、もう一方のグループには「いらいらさせられた出来事」を記録させたところ、1日の終わりに感じるストレスレベルは、感謝グループのほうが低いという結果が出たそうだ。

そこでシェティ氏は、読者に対してこんな提案をしている。

やってみようーー感謝の日記をつける
毎晩、5分間だけ日記をつけよう。自分が感謝したいものごとを書き出してみてほしい。
実験をさらに深めたい人は、日記をつけ始める前の1週間、睡眠時間や睡眠の質を記録しておくといい。そして、日記をつけ始めたら、毎朝、どれくらい眠れたかを記録する。睡眠が改善されていないだろうか? (386ページより)

こんなとき僧侶ならどう考えるだろう?

たとえばこのように、本書におけるシェティ氏のアプローチは親しみやすい。したがって、興味を持ったことから試してみれば、日常生活が少しずつ、より心地よいものになっていくかもしれない。

重要なポイントは、シェティ氏が僧侶になることを勧めているのではなく、単に僧侶的思考=モンク・マインドを持とうと提案しているという点である。つまり押しつけはそこになく、ただ「こちらに来てみれば?」と読者を誘っているにすぎないのだ。

いろいろ共感できる点が多いのは、おそらくそのおかげなのだろう。本書を読み終えるころには「こんなとき僧侶ならどう考えるだろう?」と自分に問いかけるようになっているはずだというが、なるほど納得できる話ではある。

印南 敦史 作家、書評家

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

いんなみ あつし / Atsushi Innami

1962年生まれ。東京都出身。広告代理店勤務時代にライターとして活動開始。「ライフハッカー[日本版]」「ニューズウィーク日本版」「WEBRONZA」「WANI BOOKOUT」などで連載を持つほか、「ダ・ヴィンチ」など紙媒体にも寄稿。『遅読家のための読書術――情報洪水でも疲れない「フロー・リーディング」の習慣』(ダイヤモンド社)、『世界一やさしい読書習慣定着メソッド』(大和書房)、『人と会っても疲れない コミュ障のための聴き方・話し方』(日本実業出版社)、『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(星海社新書)など著作多数。

この著者の記事一覧はこちら
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
猛追のペイペイ、楽天経済圏に迫る「首位陥落」の現実味
猛追のペイペイ、楽天経済圏に迫る「首位陥落」の現実味
ホンダディーラー「2000店維持」が簡単でない事情
ホンダディーラー「2000店維持」が簡単でない事情
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT