幸せを求めるほど欲望を募らせる人が陥る悪循環 「僧侶の意識=モンク思考」が悩める人を救う

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本書においては、モンク・マインドに至るまでの道のりが3つのステージに分けて紹介されている。

まず第1のステージは「手放す」。われわれの成長を押しとどめている外的要因、自分の内側にある障害物、恐怖などを削ぎ落としていく段階である。シェティ氏はこれを「大掃除のようなもの」だと表現しているが、確かに成長するためには、手足を伸ばすスペースをつくる必要があるだろう。

第2のステージは「成長する」。人生でさまざまな決定を下す際に意図、目的、自信を持って行えるよう、生活を見直していくことを促しているのである。

そして第3のステージは「与える」。自分自身という枠を超えて世界に目を向ける、感謝の気持ちを広げ、分かち合い、人間関係を深めていくという段階。私たちはギフトと愛を他者と共有したとき、奉仕することのほんとうの喜びとメリットに気づくものだという。

シェティ氏はこの3つのステージを“モンク・マインドに至る旅”と表現しており、だとすれば第1のステージから順番に読み進めていくべきなのかもしれない。しかしその一方、どこからでも読み始めることができるのも本書の魅力ではある。

感謝は真価の実感

それだけ平易だということで、しかも紹介されているのは簡単に試せることばかりだ。たとえば個人的には、第9章「感謝――世界最強の薬」のなかで、(心を鍛えて自分の内側を見つめられるようになった次の段階として)外側に目を向け、他者との関わり方を考えるべきだと論じている点に共感した。

人はよく、何かの出来事で幸運を感じたとき、ハッシュタグ「#blessed(恵まれている)」をつけてSNSに投稿したりする。つまり特定の瞬間にありがたみを感じているわけだ。でもそれは、今の自分が何のおかげで存在するかということにまで考えを掘り下げ、日々、生かされている事実に心の底から意識的に感謝することとは違う。(384〜385ページより)

ここでシェティ氏は、ベネディクト会修道士のデヴィッド・スタインドル=ラストの言葉を引き合いに出している。彼は「感謝は真価の実感であり、『金銭的価値とは関係なく、そのものにかけがえのない価値があると認めたとき』に生じる」と述べているのだそうだ。

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