アニメで表現したテレビ番組という意識で臨んでいる
――題材の選び方も変わってくるのでは?
先ほどドラマに近いと言いましたが、アニメ番組というよりは、アニメーションという表現手段を使ったテレビ番組だと考えています。そして、テレビ番組として考えたときには、視聴者を退屈させないため、興味を持たせるためにどういったことが必要なのだろうか、と考えなければなりません。そのためには、ストーリーコンテンツであっても、知的好奇心をくすぐる要素がないとダメだと思うのです。
『宇宙兄弟』という作品は、宇宙開発を背景にしなくても、そのドラマは成り立つと思います。それこそ医者になるとか、パイロットになるといったことに置き換えられると思うのです。でも、『宇宙兄弟』では、宇宙開発の描写をリアルに描くことで、ドラマにプラスアルファ的な情報が得られる。そこが魅力だと僕は思っています。
今の視聴者は、ネットでもテレビでも情報が入ってこないと退屈してしまうと思うのです。だからテレビを見ながら、携帯をいじったりしている。やはりストーリーコンテンツであっても、情報を入れてあげないとと思うのです。ですから演出的にも、それを意識しています。たとえば『ヤッターマン』では毎週、「ドクロベー様の豆知識」というコーナーを入れていました。このコーナーを毎週見ていれば、雑学がちょっと増えるよということなのです。『ヤッターマン』であっても、そういったことは必要なのだと思います。そういった知的好奇心をくすぐるものが、今の人たちを引き付ける要素なんじゃないかと思っています。
――そのあたりの考え方というのは、永井さんのキャリア的なこともあったのでしょうか?
それはあると思います。もともと僕は情報番組やバラエティ番組からストーリーコンテンツに入っていった人間なので、逆に言うと、僕でなければそういったことは考えなかったかもしれません。それが、僕がいる価値なのだと思っている。だからアニメ業界でおかしいなと思ったことは、できるだけ言うようにしています。
よく「アニメだから」と言われるのですが、アニメである前にテレビ番組なのです。裏で放送されているのは、バラエティ番組だったり、情報番組だったりしますからね。そこと視聴率を争っているのに、「アニメだから」という理屈はおかしいわけですよ。そこと戦っていくためには工夫をしなければいけない。そうしないとテレビからアニメが消えてしまうのではないかと思うのです。
今の深夜アニメのファンは、子どもの頃からアニメを見て育った人たちに支えていると思います。でも、これから子どもたちがアニメを見る習慣をなくしてしまうと、いずれは深夜アニメだって成立しなくなってしまうのではないか。まずは誰もが見られるような作品を作って、アニメを見て育つ環境を作っていかないと、アニメ界が先細りになるのではないかと危惧しています。
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