「自宅葬」コロナ禍の今、じわり注目を集める背景 「家族だけでゆっくり見送り」を希望する人も

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かつて一般的であった自宅葬に再び注目が集まっている。その背景とは(写真:8x10/PIXTA)

コロナ禍により葬儀が様変わりしている。参列人数を絞ったり、食事などをなくしたりする小規模・簡素化だけでなく、葬儀を行う場所にも変化をもたらしている。葬儀は、大別すると自宅と自宅以外に分けられるが、かつて一般的であった“自宅”での安置や葬儀に再び注目が集まっているようだ。

首都圏全域を営業エリアとし、年間約2500件の葬儀を施行している「むすびす」(東京都江戸川区)によると、2020年の自宅施行件数(自宅に安置後、儀式は行わずに火葬する直葬も含む)は、前年比58%増と大幅に増え、全施行件数に占める割合は前年比2.2ポイント増の6.9%となった。

その要因について、同社の山野内絵理さんは「新型コロナの感染拡大および緊急事態宣言の影響により、特に火葬式(直葬)が増えました」と話す。

直葬を除く2020年の自宅施行件数は、前年比約5%増で、全施行件数に占める割合は0.2ポイント増の2.7%だった。ここ5年間は2.5%~3.0%の間で推移しており、底堅いニーズがあるようだ。その要因を、同社では次のように見ている。

「身内だけの葬儀であれば、愛着のある自宅で送ってあげたい。お別れの時間を式場での時間以上にとりたいなどのニーズがあると考えられます。また、式場使用料がかからず、家族で見送りができるということで、自宅葬を選択される方もいらっしゃいます」(山野内さん)

自宅葬特化の葬儀社でも件数増加

これらの要因に加えて、小規模な家族葬が増えて自宅でも葬儀を行いやすくなったことや、在宅医療が増えたことなどを背景に、自宅葬を専門とする葬儀社も登場してきている。そこで、自宅葬専門葬儀社2社の取り組みや客層などについて取材した。

自宅葬に特化した「鎌倉自宅葬儀社」(神奈川県鎌倉市、以下鎌倉自宅)でも2021年1月から8月までの自宅葬件数は、前年同期比70%増と大幅に拡大している。

同社は東証マザーズ上場のカヤックが2016年8月に設立した。個人事業主として葬儀を10年間行ってきた馬場 偲さんが、カヤックに提案して自宅葬事業を行うことになった。自宅葬を提案したことについて、馬場さんは次のように話す。

「数多くの葬儀の現場を見てきた中で、残念ながら、故人様を送りだす遺族が納得できていない、と感じることもありました。納得できていない原因は、世間体や葬儀社の都合です。遺族の満足度が一番高かったのは自宅葬でしたので、提案しました」

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