「自宅葬」コロナ禍の今、じわり注目を集める背景 「家族だけでゆっくり見送り」を希望する人も

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かつての自宅葬中心時代とは異なり、現代では自宅葬を行うにはさまざまハードルがあると言われている。どのようなハードルがあり、それにどう対応しているのか。

鎌倉自宅の馬場さんがハードルとして挙げるのは、まず、昔の葬儀のように、部屋や祭壇などを飾ったりして準備をしなければならず、大変だと考えている人が少なくないこと。これについては、「葬儀はこうしなければならない、これはしてはいけないということはなく、ご遺族が好きなようにされてもいいのですよ」と説明。

2つめハードルは、特に首都圏では住宅が隣接しているケースも多く、近隣への気遣いが必要なこと。これに対しては、「車の出入りがあるので、向こう三軒、両隣にはできる限りお声がけしたほうがいいです。必要であれば、私のほうで行います」と助言。

最も大きなハードルは、自宅では葬儀ができないと思っている人が多いことで、これをどうクリアしていくかは今後の課題という。

「自宅が狭くて難しい」という悩みも

一方、燈の保坂さんはハードルとして2つ挙げる。1つは、自宅で行いたいけれど、闘病生活をしていたので掃除もできていないので難しいという人が多いこと。これに対しては、「部屋の掃除でしたら、私やスタッフが全力でお手伝いします。それが原因で自宅葬を断念する必要はありません」と話す。

もう1つのハードルは、自宅は狭いので難しいと言う人が多いこと。これに関しては、「会葬していただく方々を分散して、自宅という利点を最大限に生かして対応します。“御式”という概念にとらわれ一堂に会すのではなく、ご自宅での時間をうまく管理して多くの方にお別れをしていただくことで解決できることも多いです」と説明している。

葬儀の小規模・簡素化、在宅医療の拡大、コロナ禍などによって見直されるようになってきた自宅葬。とは言え、首都圏ではまだ5%にも満たない。しかし、通夜、葬儀・告別式など儀式を行わない直葬の割合が30%~40%になっていることを考えると、葬儀・弔いのあり方として自宅葬が持っている意義や価値は大きい。

塚本 優 終活・葬送ジャーナリスト

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つかもと まさる / Masaru Tsukamoto

北海道出身。早稲田大学法学部卒業。時事通信社などを経て2007年、大手終活関連事業会社の鎌倉新書に入社。月刊誌の編集長を務める。2013年フリーライターとして独立。ライフエンディングステージの中で「介護・医療」と「葬儀・供養」分野を中心に取材・執筆している。ポータルサイト「シニアガイド」に「終活探訪記」を連載中。「週刊高齢者住宅新聞」などに定期寄稿。

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