映画の「ランボー」がリーダーには不向きな理由 「さりげなく」「繊細な」声掛けが部下を動かす

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最善のリーダーとはふつう、命令ではなく提案を通じて人々を導く。彼らは可能なかぎり頻繁に、自分のアイデアを隊員の前に提示し、それが最善の考えであることに気づかせ、部下たち自身の意思を通じてそのアイデアを実行に移させる。これは人を率いるうえで、おそらく最強といっていい手法であり、相手の心の中に信じがたいほど強烈な責任感を植えつける。

なぜかといえばメンバーがみな、自分らが実行しようとしているアイデアを自分自身のものだと感じるからだ。間接的なリーダーシップはほぼいつも、直接的なリーダーシップに勝利をおさめる。

ただし、私が「ほぼ」と言ったことに着目してほしい。直接的なリーダーシップが必要とされる状況はたしかに存在する。それはおおかたが、重大な決断をすぐにでも下さなければならない火急の事態だ。そうした状況においては、リーダーが前に出て号令を行うことは、望ましいどころか、絶対に必要だ。

チームが決断できない状況に陥ったときにも、同じことが言える。たくさんのアイデアが提出され、議論されたものの、どの道をとるべきかチームが決断できないときには、やはりリーダーが一歩踏み出して決断を下す必要が出てくる。

どのケースにも言えることだが、リーダーが普段はあまりしゃしゃり出てこないからこそ、そしてつねにグループにかわって決断を下したりしないからこそ、リーダーみずからが出てきて指令を行えば、それは尊重される。

リーダーは熱血になりすぎてはいけない

これと対極にあるのが、日々のすべての決断やすべての選択を自分がしなければならないと感じ、すべての会話や結論の中心にいつも自分がいなければならないと感じているリーダーだ。リーダーの声はあまりに頻繁に聞こえすぎると、重みを失ってしまう。

だから、熱血になりすぎないこと。リーダーとしても、指導者としても、コーチとしても、それは同じだ。ランボーにならないこと。そうではなく、可能な限り─―もうこれ以上は無理だというところまで─―さりげなさに徹すること。そうして人を率いよう。

(翻訳:森内薫)

ジョッコ・ウィリンク 「ネイビーシールズ」元指揮官

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Jocko Willink

米海軍特殊部隊「ネイビーシールズ」に20年間在籍。昇進を重ね、イラク戦争でもっとも多くの勲章を受けた特殊作戦部隊タスクユニット「ブルーザー」の指揮官になった。退役後も着実に成功の道を歩み続け、リーダーシップおよびマネジメントについての数百万ドル規模のコンサルタント会社「エシュロン・フロント」を共同設立した。

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