「感染症危機管理」という日本初の試み
戦争は究極の国家の危機であり、過去の戦争の研究から世界は多くの危機管理の術(すべ)を学んできた。特に孫子の「兵法」やクラウゼヴィッツの「戦争論」は、国家の危機管理のみならず、会社経営や組織運営などにも応用できる知恵が詰まっている。
軍事における経験・知恵、そこから導かれた原理・原則は、感染症危機管理にも参考になる。新たな感染症という「未知なる敵」との闘い。その闘いの中で生じる「霧」や「摩擦」。平時の準備(プリペアドネス)の重要性とその中でのヒト、カネ、モノ、そして法の役割。危機時の対応(リスポンス)における指揮統制、インシデント・コマンド・システム、戦略・作戦・戦術の3階層の計画・実施、さらにその上位の大戦略レベルのリーダーシップ・判断の重要性。数えればきりがない。
この軍事における教義(ドクトリン)、それに基づいた教範(マニュアル)を、それと比較しながら感染症危機管理で作ろうとの日本初の試みが、阿部圭史氏が上梓した『感染症の国家戦略』である。感染症危機管理の基本的な思想や原則、目的を明確化し、危機の特性やそれに向かう姿勢、平時の準備、危機時の対応、さらに外交の重要性などについて、さまざまな具体例やケーススタディを示しながら、包括的かつ体系的にまとめた大作である。
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