無様なアフガン「敗走」でアメリカは何を失うのか 東大・佐橋准教授に聞く内政・米中対立への影響

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――バイデン政権の支持率は低下しています。総額約4兆ドルに上るインフラや教育、医療・介護などへの財政支出と増税の計画は、世界経済や金融マーケットに与える影響が大きいですが、今後どうなるのでしょうか。

さはし・りょう/1978年生まれ。イリノイ大学政治学科留学を経て、国際基督教大学教養学部卒。東京大学大学院博士課程修了、博士(法学)。オーストラリア国立大学博士研究員、東京大学特任助教、神奈川大学准教授、教授を経て2019年度より現職。東京大学未来ビジョン研究センター准教授(兼任)。「冷戦後の東アジア秩序」「米中対立」など著書多数(撮影:今井康一)

もちろん、現段階では法案が通るのかはわからない。審議過程で支出規模などをどこまで修正するかという要素もある。ただ状況が段々と厳しくなっているのは事実だ。最も深刻なのは、民主党内にも亀裂があることだ。民主党内の中道派は、財政出動の規模が大きすぎると言っており、他方で左派は(中道派が主導する超党派の)インフラ投資法案に難色を示すことで牽制している。左派の存在感が変わらず大きいことは、頭に入れておく必要がある。

共和党との対立も議会の夏休みに入る前から非常に激しくなっている。たとえば、中国対抗のために先端技術の研究開発などに財政資金を拠出する「米国イノベーション・競争法」は、上院では共和党との超党派合意で可決したものの、その後、下院の議論では共和党と対立し、難航している。最も超党派合意を得られやすい中国政策に関してですらも、この状況だ。共和党はより中国の政治体制そのものに批判的、民主党はよりアメリカ国内における投資を重視するという違いが鮮明になっている(ただし、半導体産業への補助金については、民主党左派から評判が悪い)。アフガンの問題は党派対立に火に油を注ぐ。

バイデン政権の腰折れリスクは?

――アメリカでは、新型コロナウイルス感染症の経口治療薬が年内にも登場し、国立アレルギー・感染症研究所のファウチ所長は「ゲームチェンジャーになる」と話すなど期待が高いです。バイデン政権の求心力という意味では、新型コロナの感染状況や経済再開の動きも大きな影響を与えますね。

ファウチ所長は「来年の春頃には状況はそうとう変わっているだろう」と言っている。バイデン政権は、アフガン撤退では徹底的に叩かれ、党派対立も厳しいが、対中競争政策やインフラなどの大型財政政策の強化という方向性は維持し、全力疾走し続けるしかないだろう。国内政治状況はよくないが、経済面などで明るい材料が出てくることはありうる。バイデン政権がアフガンの一件で腰折れするような政治状況にはならないと考えている。

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