無様なアフガン「敗走」でアメリカは何を失うのか

東大・佐橋准教授に聞く内政・米中対立への影響

アフガニスタン首都カブールのハミド・カルザイ国際空港で少年の避難を助ける米欧軍(写真:CNP/ABACA/共同通信イメージズ)
アメリカ軍の撤退期限が8月末に迫る中、アフガニスタンでは大規模な爆発により多数のアメリカ兵や民間人が死亡するなど混乱が収まる状況は見えない。アフガンからの「敗走」により、アメリカは何を失い、何を維持しようとするのか。東京大学東洋文化研究所の佐橋亮准教授に話を聞いた。

――アメリカがアフガニスタンから軍を撤退させる中、タリバンがあっという間に首都を陥落し復権しました。アフガン市民を見捨ててアメリカ軍が逃げるかのような光景が全世界の目に焼き付きました。

まさにアフガンからの「名誉なき撤退」だ。バイデン政権は恐らく8月末までに計画どおりアメリカ軍を完全撤退させるのだろうが、共和党は無様な撤退を攻撃し、外交における党派対立は激しくなりそうだ。他方で、あの撤退の仕方は、アメリカが20年間かけて育てようとしたアフガンの民主的な市民を見捨てるものであり、世界におけるアメリカの道義的なリーダーシップを弱めたのは間違いない。

そもそも、今年の段階でアフガンには小規模なアメリカ軍しか派遣されておらず、それが現地政府に支えていたのだ。それすらも惜しみ、自分たちが後押ししたガニ政権を放り出した印象を作ったうえで、バイデン政権が今年12月に民主主義国のリーダーを集めた「民主主義サミット」を開催するというのは支離滅裂だ。

アメリカは同盟国からも逃げ出す?

――日本を含めた同盟国への影響は?

今回の問題が、アメリカの同盟国ネットワークや世界戦略の信頼性まで傷つけたとは考えないほうがいい。そもそもアフガンは「帝国の墓場」や「文明の交差路」などと呼ばれ、古くから大国が侵略しては失敗する政治的な難所だ。治安を安定化することは難しく、欧州や日本などアジアの同盟国の状況とはまったく異なる。アメリカにとって同盟国は死活的な利益がかかったものであり、台湾を含めて現地の政府の能力は高く、パートナーとして十分に育っている。「いざとなればアメリカは同盟国からも逃げるのではないか」という見方は行きすぎだ。

――アメリカ国内に目を転じれば、テロは激減しており、同国史上最長の戦争となったアフガンに対して、厭戦気分が強いですね。

党派を超えて厭戦ムードがある。そもそもアフガン撤退は、トランプ政権が決めたもので、それをそのまま踏襲したのがバイデン政権だ。アフガンでの作戦展開はあまりに長期化した。この間、アメリカ兵は2000人以上が死亡し、約1兆ドル(約110兆円)の資金が投入された。一方、アメリカ国内のテロ対策はこの20年間で進化し、かなりのレベルに引き上げられた。欧州もそうだが、アフガンに関わり続けることを正当化しにくくなっていた。ただし、アフガン・パキスタン国境地域などが、アルカイダやイスラム国などテロリストを育む温床として依然として危険視されていることは変わらない。

とはいえ、こんなに早くアフガン政府の陥落を許すとは誰も思っていなかった。タリバンがうまく戦いを進めた面もあるが、時間軸を読み切れなかったのは、バイデン政権の過失であり、批判は免れない。アフガン政府に渡された大量の武器が彼らの手に渡ったことにもなる。

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