難病ALSで逝った父が家族に遺した「1冊のノート」

「ネオ・ヒューマン」が人類に与えてくれる希望

僕の親父の肉体は亡くなりましたが、「MBさんのお父さんは、こう考えていたのか。じゃあ自分もこう生きよう」という思いが広がっていれば、親父の社会に対する影響力は生きているわけです。

生きている、死んでいるというルールそのものも、もしかすると破ることができるのかもしれませんね。

いわゆる「ビジネス書」がいまいち役立たない理由

本書のよいところは、ピーターさんの生い立ちから思考、行動などが小説仕立てで描かれているところです。子どもの頃に起きた出来事があり、人間関係がこうなって、このような出来事が起きたので、ピーターさんはこういう考え方をするようになったんだな、ということがよく理解できます。

誰であれ、行動を決めるときには、思考が介在しています。どういう思考をしていて、その思考はどういった背景から生まれてきたのかというところは、本書のような形式だからこそ伝わるものがあります。

前提や環境から思考が生まれ、思考から行動が生まれ、行動から結果が生まれる。この一連のフローは、追体験することでしか得られません。本書はそこをわかって読むと非常に面白いと思います。

一般的なビジネス書は、「私はこう考えて、この事業を起こした」という思考と行動、結果までは説明してくれます。でも、その思考が生まれた前提や、本人の置かれた環境については、再現性がないし、「かっこ悪い」ということもあって、ほとんど触れられません。そのために、表層的な方法論を語るにとどまってしまうのです。

方法論では「AをやるとBになる」とされますが、それはウソだと僕は思います。たとえば、ダイエットの方法論は世の中にたくさんあるのに、なぜ肥満の人がこんなにも多いのでしょう。「皇居の周りを走っている人は年収が高い、走れば年収が1000万円になる」という話もありますが、僕は運動が苦手ですから、走ったとしても続きません。

方法論だけで救おうとしても、その人の前提や個性などにマッチしなければうまくいかないのです。しかし、小説や本書のような形式の本を読んで、主人公の人生を追体験すると、伝わるものがあります。

すると日常が輝きはじめます。知らない人と出会って話したとしても、「そうか、この人の言葉には、こんな意味があるんだな」という解釈が芽生える。そこに活路が生まれ、思考が生まれ、行動が生まれていく。日常のつぶさな人間関係の言葉や会話、たわいもないことにヒントや答えがあるわけです。

そこを掘り下げて噛みしめる視点を持つことによって、はじめて方法論は生きてくるものでしょう。

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