参入は楽でも生き残り3割「キッチンカー」の現実 コロナ禍で増加、成功している人の共通点とは

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キッチンカーもコロナに翻弄されてはいるが、参入者は増えている。

空きスペースのマッチング事業のパイオニア「軒先」(東京都千代田区)の西浦明子社長(52)は「コロナ前に比べて弊社に登録された出店者(社)は1.4倍に増えました」。

キッチンカー専門メーカー「フードトラックカンパニー」(東京都目黒区)の浅葉郁男社長(37)も、「受注したキッチンカーは、2019年が月間平均10台ほどでしたが、昨年は20台へと倍増し、今年は上半期の実績で25台です」と話し、キッチンカー需要は強いという。

有名店もキッチンカー事業に着手

グルメに知られた都内・丸の内の「東京会館」が昨年12月、「日比谷松本楼」が今年1月からキッチンカー事業に着手したことも話題となった。

人気の理由は、密を避けての飲食で、弁当・総菜を購入したい消費者ニーズにほかならない。また、経営側にとっては、初期費用、維持・運営費を安く抑えられるため出店しやすい。もし、思うような売り上げが確保できない場所であれば、即座に移動して新たなマーケットを探せる……。

主な出店場所はオフィス街や幹線道路のロードサイド店駐車場だが、新たに住宅地やタワーマンション、大型総合病院が注目されている。軒先の西浦社長がこう話す。

「コロナ前は見向きもされなかった住宅地に、いざ出店してみたら、意外とランチや総菜の需要がありました。大人数での外食がしにくい中、非日常的なキッチンカーでの買い物は、心をウキウキさせるプチレジャー感があるからではないでしょうか」

今年4月から埼玉県内で、チャーシュー丼などを販売する「ラッキーポークカー」を出店している河野英司さん(52)は昨年6月、28年間経営してきた都内千代田区の居酒屋を閉め、新たな活路にキッチンカーを選んだ。

「ラッキーポークカー」のチャーシューエッグ丼(写真:AERA編集部)

「老若男女問わず、好き嫌いが割と少なく、安価に提供できることから豚肉料理をメインにしました。曜日ごとにJR蕨駅、北与野駅の駅前と越谷市の獨協医科大学埼玉医療センターにいます」

愛車の製作は先述のフードトラックカンパニーに依頼し、厨房設備を含めて初期費用は約350万円。すべて預貯金で賄った。

「出店場所は仲介業者にあっせんしてもらっています。自分で探したこともあるのですが、条件のいい場所はすでに仲介業者が押さえているので、『餅は餅屋』に任せることにしたわけです」

出店時間は12時から20時前後。売れ行きがいいのは16時以降の総菜タイムで、1日当たり3万~5万円の売り上げという。

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