参入は楽でも生き残り3割「キッチンカー」の現実 コロナ禍で増加、成功している人の共通点とは
クレープとタピオカをメインにフランチャイズ(FC)制の「ベリーズ・カフェ」で奮闘中なのは、同じく埼玉県の小林勲さん(54)だ。
「2年前、それまで25年間勤務していた冠婚葬祭会社を早期退職して、昨年1月に開業しました。下調べの結果、過去の実績と1年を通じて売り上げが見込める商品としてクレープを選び、研修や車両、食材をセットで起業支援する大阪の会社と契約しました」
その会社は13年6月に創業した「NE PROJECT」(大阪府堺市)で、和田幸一社長(52)は大手クーポンサービス会社の役員を経て開業支援を始めた。
「クレープは食べたことはなくても、どのようなスイーツか誰もが知っていますし、ポップで可愛いイメージなので場所が借りやすい。企業イベントの出店依頼も多く、しかも比較的利益率が高いのが魅力です。売り上げは現状で月平均70万円くらいから、多い人で200万円」(和田社長)
同社の強みは和田社長自らが開拓したショッピングモールやアウトレットモール、ホームセンター、スーパーなど、全国に数百カ所持つ独自の出店先だ。
成功する人は?
一方、小林さんにとっては大きな人生の岐路。少なからず葛藤があった。
「最初、妻に相談したときは、猛反対されました。でも定年までのカウントダウンが見えてきて、その後の生活に不安を感じていたので、『気力も体力もあるうちに起業して基盤を作っておいたほうが得策』と説得して了解を得ました」
出店した矢先にコロナ禍となり、当初の目算とは違う結果になったが、
「お客さんの笑顔を毎日見ることができるのは、本当にやりがいを感じます。夏場は苦戦しますが、リピーターさんが徐々に増えてきてるので頑張れますね」
キッチンカーの開業に当たっては、多くの仲介業者などがそれぞれセミナーを開いているので、まずは受講することをお勧めしたい。
とはいえ、皆が皆、成功するほど楽ではない。無形工房の中野社長がこう指摘する。
「だれでも参入できるのがキッチンカーですが、3年後に生き残っているのは3割ほど。調理に火を使いますから、料理によっては車内温度が70度を超すことはザラです。それでも成功している人は、助言者の話を素直に聞き、模倣が上手な人」
車両購入の際は、少なくとも数社から相見積もりを取ったほうがいい。
「保健所の許可がとりやすい設計で、オペレーションがスムーズにできる。そしてコンディションのいい車両を選ぶことが大切」(前出の浅葉社長)
「予算が少なければ中古車。150万円ほどからあります」(中野社長)
流行に踊らされず、信念を貫くことが成功への早道だ。
(文/高鍬真之)
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