続いて、優秀賞の2作品を紹介しよう。
就活生は内定が喉から手が出るほど欲しい一方、内定を出した企業の人事担当者は、一刻も早く「内定承諾」の返事が欲しくてしょうがないもの。内定を出すまでは強者だといえる人気企業をしても、内定を出した後は企業が弱者になる。主導権は学生の手の中にあるといっていい。
良識ある企業は内定切りなどできない代わりに、学生はメール一本で気軽に内定辞退をしてくる。内定承諾の返事を、手数料を払ってでもいいから早く届けてほしいという、その切実な作者の思いを、コロナ禍で急成長する手軽なデリバリーサービス「Uber」に例えて表現した、秀逸な作品である。はたして、この作者の思いは内定を出した学生にしっかりと伝わったのだろうか。どうか届け先を間違えないように配達してほしいものだ。
趣味が「釣り」と書いてあれば、当然アウトドアなイメージを持つ。ところが、よくよく聞いてみると、リアルな釣りではなく、「ゲームソフト『あつまれどうぶつの森』での釣り」だという。
アウトドアなイメージは一変、一気にインドアなイメージに大転換。大事な情報を応募者に隠されていたことに気づいた作者の気持ちと、今どきの学生にはこういうことも想定しないといけないのかも、という参考事例をユーモラスに紹介している作品である。学生にしてみれば、コロナ禍でどこへも行けない環境での楽しみといえば、室内でできるゲームやSNSしかない状況にあることも考慮して、採用担当者には寛大な評価をしてあげてほしいところである。
本当に実在するのか?
ここからは、佳作に入選した作品を抜粋して紹介しよう。
苦戦し続ける自社の採用状況を自虐的に描くことで、今の採用活動において主流となるオンライン採用が、企業と応募する学生のつながりをいかに希薄にしているか、人事担当者を代表した嘆きともいえる作品。
それにしても、インターンシップを皮切りに、セミナー・会社説明会もオンラインで開催し、一次面接から最終面接までをすべてオンラインで選考し、内定を出しても内定辞退となってしまえば、一度も対面で会うこともなく、応募学生との関係が終わってしまう。この状況は、あまりにもバーチャル感にあふれ、採用活動の手応えどころか活動の実感も湧かないのではないだろうか。内定を出した学生は本当に実在するのかと、疑念すら覚えてしまいそうである。
あと1人の内定者が内定承諾してくれれば、2022年卒学生の採用活動が終わるかという採用活動の佳境となるころには、もう2023年卒向けのインターンシップが始まるという、休みなく続く採用活動の忙しさがよく伝わる作品。
「終わるはずだよ」と「始まるはずだよ」の対比が見事である。できれば今年度の採用活動をすっきり終えて、心新たに次年度のインターンシップに臨みたいところだろうが、それも自分たちでは決めることはできず、あと1人の内定者の決断に委ねられている。なんとも歯がゆいことだろう。
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