災害打撃も「熱海復活の仕掛け人」が悲観しない訳 土石流災害で浮かび上がった課題と解決の糸口
――今回の土石流災害を受けて、地域が抱える課題はどんなところにあると感じましたか。
熱海がもともと持っている弱点や課題があからさまになったと感じています。伊豆山地区も含めて熱海市全体の高齢化が進んでいて、65歳以上が占める高齢化率は約47%です。
しかも土地柄、住宅が傾斜地に建てられていることが多いため、高齢者は階段や坂の上り下りが厳しく、災害時に避難したり、必要な物資を取りに行ったりすることもままなりません。一方、支援する側の人たちも高齢化しており、若手で動ける人が少ないのが現状です。もし、災害が一部の地区だけではなく、広域だった場合、途端に機能しなくなるでしょう。
住宅の問題もあります。今回の土石流災害で自宅に住めなくなった方のために、既存の公営住宅や民間の賃貸住宅を「みなし仮設住宅」として提供することになりましたが、そもそも熱海の住宅は「新耐震基準」以前に建てられたものが多いのです。耐震性に問題のある物件が多い中でさらにハザードエリアを除いていくと、市場に流通している物件で住める物件は非常に限られてきます。
熱海は、空き家率が50%を超えるなど全国的にも高い数字です。軒数で言えば、1万8000軒もの空き家があるにもかかわらず、住宅不足にあえいでいる。そうした地域が抱える矛盾についても取り組まなくていけないと思っています。
観光だけに頼っている地域は災害時に脆弱になる
――災害ボランティアも多数応募があったそうですね。地域を支えたいと言う人も多いのでは?
そう思います。熱海市の災害ボランティアセンターには約4000人の応募があり、市民だけでも1000人近くの人が登録したそうです。災害を機に地域を応援したい、手助けしたいという思いのある人が一気に生まれたと感じています。そういう方たちが実際にどういう経験やスキルを持っているのかを把握して、適材適所で活動してもらうことが、熱海が抱える弱点や課題を埋めていくことになると思っています。
もちろん観光客として来訪し、地域を盛り上げていただくのもありがたいことですが、それ以上に熱海で仕事する人や住む人が増え、地域の経済が持続的に潤っていくことが理想です。
地元の産業が観光業だけに頼っていると、いざ災害が起きたときに脆弱化しやすくなります。遊びに来てもらう以外にどうやって街にかかわってもらえるか、そのきっかけや場づくりが重要だと考えます。
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