災害打撃も「熱海復活の仕掛け人」が悲観しない訳 土石流災害で浮かび上がった課題と解決の糸口

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――観光地と被災地が同居した形になっている。地元の人たちが抱えるジレンマは大きいのではないでしょうか。

いまだ行方不明者がいる中で「観光どころではないだろう」と言う人もいれば、経済的な状況から「一刻も早く観光客に来てほしい」と言う人もいます。人によって状況も感じ方も異なるので、ひとくくりにできないのが現状です。ただ、災害から1カ月が経った今、「そろそろ観光に力を入れなくては」というムードに変わってきていると感じます。

7月の4連休は観光客が増えたが、例年よりは少ない(7月24日筆者撮影)

というのも、宿泊施設全体の8月の予約が昨年比で50%を切っている状況です。熱海の夏の風物詩ともいえる海上花火大会と海開きが中止になった影響が大きく、各事業者は頭を抱えています(8月末まで花火大会中止/7月17~8月29日まで熱海サンビーチ・長浜・網代の海水浴場開設中止)。

土石流の影響で流木やがれきの破片が流入

海開きができない理由に安全性の問題があります。土石流の影響で沖合から砂浜に、流木やがれきなどの破片が流入するおそれがあるためです。流木は行政が海岸付近にネットを張ることで防げるとしても、細かい木片やプラスチックゴミなどは海中や浜辺に漂着していて泳いだり、素足で歩いたりするのは危険が伴います。そのため遊泳禁止の決定が下りました。

そこで熱海の旅館組合の青年部と商工会議所の青年部が中心となって、地域の事業者や市民ボランティアとともにサンビーチの清掃活動を実施しました。「ビーチを綺麗にして、来てくれた観光客の皆さんに安心して楽しんでもらいたい」――。そうした思いのもと、民間の事業者が一体となって自分たちが今、できることに取り組んでいます。

災害発生からちょうど1カ月の8月3日に「熱海サンビーチ・クリーン大作戦」と題して清掃イベントが行われた。120人ほどのメンバーが集まり、一斉に清掃を行った
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