和歌山が「モビリティ変革」の震源地となる理由 モビリティ産業不毛地帯で活躍するベンチャー

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glafitバイクの量産化については、設計と試作を和歌山で行った後、中国でパーツを手配し、最終組み立てを和歌山市内で行う形をとった。組み立てを行うのは、和歌山市に本拠を置く、写真現像・プリント機器製造の大手、ノーリツプレシジョン。地元企業同士の業務提携による「メイドイン和歌山」だ。

販売実績は、初期モデル「GFR-01」が2017年10月~2020年3月に約5000台。2020年10月公開の2代目モデル「GFR-02」が、2021年2月の1回目販売で500台、次いで約3000台を受注している。

左が電動キックスクーターLOM。鳴海氏が乗る右はペダル付き原付き電動バイクGFR-02(筆者撮影)

その他、電動キックボードの「LOM」も、2020年5月から発売している。販売は全国各地の自転車店やバイク店に加えて、オートバックス各店舗でも行われる。

ユーザー層は、30代前後を想定していたが、実際には40~50代でほとんどが男性。東京など都心では通勤等で利用し、地元和歌山では趣味用に使う人が多いという。

アップルのビジネス手法をモビリティに

「GFR-02」は19万8000円というプライスタグがつけられたが、この“20万円弱” という価格設定について、鳴海氏は「i Phoneの上位モデルを参考にしている」と話す。

また、アップルを参考にするのは、価格面だけでなくハードウェアとサービスの両方をトータル的に手がけるビジネス手法そのものもだ。「アップルのビジネス手法を、コネクテッド技術を使いモビリティでも取り入れたい」と将来構想を語る。

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そのうえでglafitが目指すのは「移動のエンターテインメント化」だという。

glafit自体が次世代ビジネスを孵化(ふか)する、インキュベーションの機能を重視する姿勢を示した形だ。今後も、和歌山発のモビリティの行方をしっかり見守っていきたい。

なお、取材を通じて、世の中の常識に捉われず、“ユーザー視点第1” という鳴海氏の経営思想が印象的だったことを付け加えておきたい。

取材の後半は、筆者と鳴海氏のモビリティベンチャーについてのディスカッションとなり、筆者の世界各地での取材体験に対して、鳴海氏は質問を投げかけてきたが、「さまざまな挑戦をしてみたい」という彼の素直な姿勢が清々しかった。

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桃田 健史 ジャーナリスト

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ももた けんじ / Kenji Momota

桐蔭学園中学校・高等学校、東海大学工学部動力機械工学科卒業。
専門は世界自動車産業。その周辺分野として、エネルギー、IT、高齢化問題等をカバー。日米を拠点に各国で取材活動を続ける。一般誌、技術専門誌、各種自動車関連媒体等への執筆。インディカー、NASCAR等、レーシングドライバーとしての経歴を活かし、テレビのレース番組の解説担当。海外モーターショーなどテレビ解説。近年の取材対象は、先進国から新興国へのパラファイムシフト、EV等の車両電動化、そして情報通信のテレマティクス。

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