ある日突然「解雇」、空白の6カ月間で得た気づき 身を持って「会社ってあっさり潰れる」と実感

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──「背水の陣」で結果はそこまで変わるんですね。

今考えると「できるなら始めからやれよ」って感じですよね。でも、本当に追い詰められるまでは「スキルはあるわけだし、その場で答えられたら受かるだろう」って思っていたんです。

みじめな思いもした。子どもとの生活もかかっている。ぎりぎりまで追い詰められて初めて、その甘い考えを捨てられました。

最初は「試験が得意なだけじゃダメだ」と思っていたんですが、切羽詰まって「試験が得意なこと」を生かせたのが、よかったかもしれません。

──そこで晴れてAmazonシアトル本社に入社できたと。

はい。ここでなら自分のスキルを生かせるし、最先端の技術にも携わることができる。結果的に最高の転職先を見つけられたと思います。

あんなに不安だったのに、仕事が決まったら強気になってしまうもので、給与交渉も頑張りました。Amazonって、報酬が現金と株で支給されるんです。現金の部分は上限が決まっているのでなかなかアップが難しいんですけど、株の部分なら交渉可能。その後Amazonの株価が上がったこともあり、最終的には前職の倍以上の給与をもらっていました。

──ご自身にとってはつらい6カ月間だったと思いますが、振り返ってみていかがですか?

おっしゃるとおり、経済的にも精神的にもキツかった……ダメージはとてつもなく大きかったです。でも僕にとって離職期間が長引いたことは、次のキャリアに本気で挑める機会をもたらしてくれました。今振り返れば、ですけどね。

それと無職期間に、機械学習のアルゴリズムやpythonに関する最新技術を学べたこともよかったです。会社に所属しているときって、どうしても会社が選定した技術をメインで使うので、身に付けたい技術を学ぶ時間がなかなか取れないんですよ。だから自由に技術を学べる時間を取れたのは思わぬ収穫でしたし、それを今の仕事にも生かせています。

「会社ってあっさり潰れるんだな」

──「キャリアを止めると技術力が劣化するのでは……」と考えるエンジニアは多いですが、そのように前向きに考えることもできるんですね。そのほか、今回の経験を通して考え方や価値観に変化はありましたか?

身を持って「会社ってあっさり潰れるんだな」と実感しました。最近よく言われることではありますが、大企業であっても「絶対大丈夫」なんてことはないんですね。

だからこそ1つの会社にしがみつくのは危険だし、いつでも次の会社に移れるようにつねにスキルアップしておく必要がある。優先的に「持ち運び可能で、市場価値の高い」スキルを身に付けておかなきゃいけないと思うようになりました。要は、ポータブルスキルですよね。

それと今では、定期的にLinkedIn経由で転職エージェントの人と話をして、世の中で求められているスキルや、転職トレンドなどをチェックするようにもなりました。

ポータブルスキルを身に付けておくこと、いつ何があってもいいように転職動向をチェックし、資金面でも備えておくこと。1社に骨を埋める覚悟がある人でも、その準備はキャリアの中で決して無駄にはならないはずです。僕は結局「背水の陣」で何とかしてしまいましたが、その気持ちを前職のうちから持っておけばよかったと思っています。

取材・文/石川香苗子 編集/大室倫子

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『エンジニアtype』編集部

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