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東大教授が語る「人がサイボーグになる」の現実度 「ネオ・ヒューマン」が示す「未来の人類」の姿

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  • 稲見 昌彦 東京大学先端科学技術研究センター 身体情報学分野教授
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私はこのプロジェクトにアドバイザーとして参加しているほか、仲間の研究者とともに「稲見自在化身体プロジェクト」を進めています。

「自在化身体」という新しいコンセプト

この「自在化身体」という考え方は、詳しく述べるとそれだけで1冊の本になってしまうのですが、ものすごく簡単に言うと「サイボーグやアバターなど、テクノロジーによって拡張された能力を、人が自らの身体のように自由自在に扱えること」です(詳しくは拙著『自在化身体論』をお読みください)。

『自在化身体論』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

ここで大切なのは、単に「新しいことができるようになる」だけではなく、「自分自身の能力が高まったように感じる」ことです。

この違いは「無人運転タクシー」と「タケコプター」の違いを想像してもらうとわかりやすいと思います。いずれも「機械によって行きたい場所に行く」というゴールは同じですが、「自分自身の能力が高まったように感じる」のはタケコプターのほうでしょう。

私たちの関連研究に、人の腕を4本に増やし、自由自在な作業を可能にする「MetaLimbs」があります。この第3、第4の腕を「あたかも自分の身体の一部」のように感じてもらうのが、研究の大きな目標の1つです。

第3、第4の腕を「まるで自分の身体の一部のように」動かすことを目指す「MetaLimbs」(写真提供:東京大学 稲見研究室 & KEIO MEDIA DESIGN)

ピーターさんもまた、本書のなかで次のように述べています。

「何が言いたいかというと、インターネットの一部やそこに接続されているモノが、最終的に僕の麻痺した体の代用品になればいいと思っているんだ。周りの環境に触れるというより、僕自身が環境の一部になっていくようなイメージだ。
(中略)時がたつにつれ、僕はサイバースペースを自分の体の一部だと認識するようになるだろう。脳が持つ可塑性という性質のおかげでね。メールを送信したり、エレベーターを呼んだりするのも、指を動かしたり、眉を上げたりするのと同じ感覚でできるようになるはずだ」
(『ネオ・ヒューマン』より。太字は引用者)

自分の身体を実験台にしてまで、このような野心的な取り組みを実践しているピーターさんを知って、正直、科学者として、悔しさと尊敬が入り混じった気持ちになりました(笑)。

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【「自在化身体」の研究は「他人事」とは言えない】

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