東大教授が語る「人がサイボーグになる」の現実度

「ネオ・ヒューマン」が示す「未来の人類」の姿

ですが、私本人は死んでいるのにもかかわらず、私がいまここでインタビューに答えているという状態は、今後あり得るかもしれません。

「ヒューマンデジタルツイン」という可能性

今まさに「ヒューマンデジタルツイン」という技術が注目を集めていますが、VRやウェアラブル技術などがさらに発展し、生まれたときからの環境とのやり取りをすべて記録・学習すれば、情報的に、私と同じ振る舞いをするようなコピーができるかもしれません。

そのコピーに、入出力や環境をすべて学習させれば、私のバックアップを作ることが可能になります。

もしかすると、脳梗塞や認知症などでうまく話せなくなったとき、その技術によって、私のコピーが、より私らしく話すようになるかもしれません。私が肉体的な死を迎えたとしても、誰かが私に相談したいことがあるならば、恐山のイタコよりは、もう少し高い精度で私らしい答えをくれるかもしれません。

そのコピーとコミュニケーションをとろうとする人がいなくなったとき、それが「二人称、三人称の死」ということですね。

では「一人称の死」と「二人称、三人称の死」のどちらが恐ろしいか。もちろんその感覚は人それぞれですが、私は、身体ではなく、他者との関係性そのものが人間であるという人間観を持っています。それは、これまで申し上げた自己と環境との関係性にも通じてきます。

ホモサピエンスとしての私ではなく、人間としての稲見。「人間」という漢字は、人の間と書きますが、社会的な生物としては、「間」、つまり相互作用のほうが本体なのではないかと考えるのです。

そこを記録・再構成できるのであれば、そのほうがよほど「私」であるということになります。肉体でもない、脳でもない。これは、ピーターさんの哲学と重なる部分、重ならない部分があり、ぜひ研究者として議論したいところです。

本書は、さまざまな議論につながる1冊です。

ピーターさんそのものが、未来を実践していますし、ストーリーテリングもできている。戦略論やデザイン・フィクション思考も教えてくれる、いわば「全部入りのビジネス書」。こんな可能性があるということが広まることで、世の中が、未来に対して希望を持てるようになるでしょう。

(構成:泉美木蘭)

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