(第47回)【2011年度新卒採用戦線総括】未内定学生の大量発生、半数以上の大学で高校補習…

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●マイコミ調査でも51.4%の企業が「応募学生の質の低下」に悩む

 2010年度採用戦線に登場したのが「ゆとり第1世代」だ。本格的なゆとり教育は2002年からのことで、1987年4月2日~1988年4月1日生まれが大学を卒業したのが今年というわけだ。しかし、ゆとり教育は1980年に始まり1992年にも段階的に強化されて、2002年につながっている。大学生の質の劣化の指摘は今に始まったわけではない。

 「厳選採用」は、2005年ごろから大手企業で一般的になった採用コンセプトだ。それまでの企業は前年の秋口までに採用計画を固め、予定数の確保に血道を上げた。ところが、イマイチ人材を採用しても育たない。そこで「欲しい人材だけでいい。欲しい人材が来ないならそこで採用を打ち切る」と態度を一変させたのだ。

 厳選採用の背景には、大学生の質の劣化がある。日本では大学ではなく企業が人を育ててきたのだが、「もう人を育てる力はありません」と、企業が即戦力採用を目指すようになったことも関係している。

 ビジネスの第一線で働く人の多くは自分たちの学生時代を思い出して、「質が悪いと言っても俺らもそうだった。仕事をしている内に鍛えられる」といまだに思い込んでいる人もいるが、認識が甘い。採用担当者はもっとシビアに見ている。「2011年卒マイコミ新卒採用予定調査」(毎日コミュニケーションズ)を読むと、2011年卒採用が「非常に厳しくなる/厳しくなる」と考える理由のトップが「応募学生の質の低下」。51.4%と飛び抜けた数字である。

●高校の補習をする大学は6割に達し、高校で大学生を受け入れるケースも

 質の低下については大学も頭を悩ませ、以前から補習を行っていた。2008年度時点で、高校での学習状況に何らかの配慮をした授業をしているとした大学は、国立70校、公立35校、私立368校の計473校。2007年度に比べて10校増え、全体の63.3%を占めた。
 そして、大学の授業に対応できる学力がない学生のために補習をした大学は20校増の264校。学生間で学力のばらつきが大きいことから、英語や理数系科目などで学力別にクラス分けをした大学も282校に上った。2009年のデータはまだ発表されていないが、当然増加しているはずだ。

 しかし、大学には基礎を教えられる教員がいないので、補習をするにも限界がある。そこで埼玉の県立高校では、2011年度から県内の大学生を聴講生として受け入れるそうだ。大学は高校補習の場ではないから、このような高大連携の動きは全国に広がるかもしれない。

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