●未内定学生が大量発生
リクルートワークス研究所の大卒求人倍率1.62という発表を知っていちばん安堵したのは、キャリアセンターだったろう。4月連休前の内定率は例年5割前後だが、2010年卒でもほぼ同じだった。ところが、その後に未内定学生が活動してもなかなか内定が決まらない状況が続いた。理系は就職に強いと言われているが、状況は同じだった。2009年9月から10月にかけて首都圏の理系大学4校のキャリアセンターで話を聞いたが、どの大学の内定率も前年より10ポイント近く低かった。このキャリアセンターの「実感」は、文部科学省と厚生労働省の「大学等卒業者の就職状況調査」で裏付けられる。内定率は、10月1日現在62.5、12月1日現在 73.1、2月1日現在 80.0。これは就職氷河期を含むこの10年間で最低の数字だった。4月1日現在の内定率(就職率)が注目されたが、最終的な内定率は91.8%。9割を切らなかったが、過去2番目の低さだった。
9割強しか就職できないということは、未内定学生の大量発生を意味する。
●大学も厚労省も未内定学生の支援と救済を実施。ただし効果は疑問
未内定学生を出さないように大学も努力していた。2009年8月には明治、中央、法政、日本女子大の4大学が一緒に、未内定者向けの企業合同説明会を開催した。参加した企業数は120、参加学生数1500と盛況だった。年が明け2010年に入ると、施策は未内定学生の「支援」から「救済」に変わり、多くの私立大学で未内定学生の就職留年制度が発表、実施された。青山学院大学の場合は、卒業に必要な単位を取得した学生を対象に授業料を半額とし、多くの大学が追随した。
政府も対策を講じた。厚生労働省は「新卒者体験雇用事業」を2月1日から施行した。2010年3月卒業で就職が決まっていない学生・生徒が対象で、1カ月間の体験雇用期間に8万円を企業に支払うという内容だった。この程度では利用が少なかったと見えて、5月21日に「新卒者体験雇用奨励金」を拡充すると発表した。これは卒業までに就職できず求職活動を続ける新卒者に関し、正社員採用を視野に入れ有期雇用契約を結んだ企業に支給するもので、助成期間を1カ月から最長3カ月に、支給額を8万円から最大16万円にした。
この制度は中小企業経営者の間で話題になっているようだが、どの程度の効果があるのかは疑問である。
●2011年大卒求人倍率1.28は、未内定学生をカウントするともっと悪い
就職氷河期にも未内定のまま卒業した学生はいたし、就職留年した者もいただろう。ただ2010年卒の場合は数が多く、未内定はそのまま翌年の採用市場に持ち越される。ワークス研究所は2011年大卒求人倍率を1.28倍と発表している。この数字の母数になる「民間企業就職希望者数」には2010年卒の未内定学生は入っていないはずだから、実質的な求人倍率はもっと悪いと見るべきだろう。
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