夏に降る突然雨は「もともと雪だった」意外な事実 氷の塊「ひょう」が降る理屈も説明できる

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雷を伴う積乱雲は、雷雲とも呼ばれます。雷は「落ちる(落雷)」といますが、実は雷は一瞬の間に電気がせわしなく上下に流れるものなのです(雷スロー動画はこちら)。

夏の積乱雲の中では、氷の粒同士がぶつかるなどして電気を帯びます。雲の上昇気流や氷の粒の落下によって粒が上下に移動し、電気にかたよりが発生。すると、積乱雲が上から下に正・負・正の電気がかたより(三極構造)、負の電気がその下の正の電気をなくして枝分かれしながら地上に向かいます(ステップトリーダー)。

これが地上からのびる正の電気とつながると、地上から一気に正の電気が流れ(帰還雷撃)、そのすぐあとに雲から地表に負の電気が流れます(ダートリーダー)。1回の落雷にかかる時間は、約0.5秒。しかしこの間に何度も上下に電気が行き来しているのです。

(出所:『すごすぎる天気の図鑑』)

また、雷は、積乱雲の真下に落ちることが多いのですが、実は積乱雲の近くで雨の降っていないところにも落ちます。積乱雲の広がりは、横方向に数km~十数km程度と短く、雨の降る範囲もごく限られているため、積乱雲が上空を通過して晴れ間が見えてくるのにさほど時間はかかりません。

こうなると「屋外はもう安心!」と思うかもしれませんが、雷の音が聞こえる場所ではまだ落雷の危険性があります。雷の音が聞こえる間は、建物や自動車の中に避難するようにしましょう。

天気とうまく付き合うための秘訣

天気の急変が起こりやすい暑い夏。天気とうまく付き合っていくためにみなさんにおすすめしたいのは、気象庁のナウキャストなどレーダーの雨量情報をこまめにチェックすることです。

『空のふしぎがすべてわかる!すごすぎる天気の図鑑』(KADOKAWA)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

レーダーの雨量情報はスマホでウェブ検索するとすぐに閲覧できます。また、各気象会社のアプリなどでもだいたい気象庁のレーダーを使っていますし、独自のレーダーを使っていても見ている雨雲は同じものなので見え方もだいたい同じです。自分にとって使いやすいアプリなどを事前にチェックしておくといいでしょう。「突然降ってきた!」と思った雨でも、だいぶ前からレーダーで見えていることが実は多いのです。

夏の晴れた日は夕方にかけて大気の状態が不安定になり、積乱雲が発生しやすくなります。急に暗くなったりしたら注意が必要です。

一方で、積乱雲による夕立のあとの東の空では、きれいな虹に出会えることもあります。この虹も、レーダーの雨量情報を使って雨雲が通り抜けるタイミングを見計らって太陽と反対側の空を見上げれば、狙って出会うことができるのです。

レーダーの雨量情報をうまく使い、不安定な夏の天気とうまく付き合っていきましょう。

荒木 健太郎 雲研究者

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あらき けんたろう / Kentaro Araki

気象庁気象研究所研究官・博士(学術)。1984年生まれ。茨城県出身。慶應義塾大学経済学部を経て気象庁気象大学校卒業。地方気象台で予報・観測業務を経て現職。専門は雲科学・気象学。防災・減災のために、豪雨・豪雪などによる気象災害をもたらす雲の仕組み、雲の物理学の研究に取り組んでいる。映画『天気の子』(新海誠監督)気象監修。NHK連続テレビ小説『おかえりモネ』気象資料提供。著書に『空のふしぎがすべてわかる!すごすぎる天気の図鑑』(KADOAKWA)、『世界でいちばん素敵な雲の教室』(三才ブックス)、『雲を愛する技術』(光文社新書)など

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