五輪開催で本来潤うはずだったタクシー業界の先行きは、相変わらず暗い。それでも、タクシードライバーは変わらず街を走る――。今回はコロナ禍でも売り上げを確保する、2人の少し特殊な経歴を持つ若手ドライバーを紹介する。
練馬区に本社を置くコンドルタクシーは、創業70年を迎えた老舗企業だ。現在の都内では珍しくなった、大手タクシー会社に属さない資本が独立したタクシー会社でもある。地域密着型で、200台稼働と規模は小さい。
それでも、同社には20~30代の若手ドライバーが150人ほど在籍する。そして、彼らの約3分の1が芸能活動を行いながら乗務する“兼業”ドライバーなのだ。社内の掲示板には、舞台やドラマ、映画のオーディション情報が張り出されており、ここから世に出た芸能人もいる。
代表的なのは「美人すぎるタクシードライバー」として売り出された生田佳那さん(29)や「SASUKE」などの体育会系バラエティ番組や映画など多ジャンルで活動する平山大さん(30)だ。所属するドライバーの中には、『テルマエ・ロマエ』や『ステキな金縛り』といったヒット映画、『あなたの番です』といった人気ドラマに出演した俳優もいる。
高齢化に悩まされてきたコンドルタクシー
なぜ、彼ら彼女らのようなドライバーがコンドルに集まってくるのか。同社代表を務める岩田将克さん(49)は、自身も芸能の世界と密に関わり続けきた過去を持つ。現在も地上波のドラマに出演するなど、芸能事務所やメディアとの付き合いは深い。
ほかの経営者と同じく、コンドルタクシーもドライバーの高齢化に悩まされてきた。だが、一部の大手のように新卒採用に注力する資金はない。そこで頭に浮かんだのが、芸能界で勝負したいという若者への環境を作るということだった。
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