「面接で音楽活動を続けたい、と話すと『夢があっていい。採用!』とすぐに決まりました。え、と驚いたけど、何となくここで働くと面白い未来があるんじゃないか、という期待感がありました」
タクシー会社で働くことを選んだ最大の理由が、音楽活動を続けるため。そして、コロナが収束後に再びアメリカに渡り、音楽を学びたいという強い気持ちを持っているからだ。
當山さんと会ったのは、2回目の緊急事態宣言が明けて間もないころだった。2020年の9月から隔日勤務で働き始めた彼女だが、売り上げは7万円に近かった。その数字を業界で一握りしかいない若手女性があげていることに驚いた。
「何か特別なことをしているわけではないんですが……。ただ、こんなときだから頑張ったほうがいいと思ってがむしゃらに仕事をしていますね。安全面など女性が働くうえで大変なこともありますが、夢があるから頑張れる。それに尽きると思います。
何より休みが増えたことで、レッスンに充てられる時間が大幅に増えました。タクシードライバーになってから、シンガーとしても成長できているという実感を持てているんです」
こっそりとポケットに忍ばせている歌唱リスト
歌手活動をしている、という話になると「一曲歌って欲しい」とリクエストを受けたこともある。勤務の際には、こっそりと歌唱リストをポケットに忍ばせている。
「タクシードライバーとして働くときも、やっぱりエンターテイナーでありたい、という想いが強いのかな。玉置浩二さんは、言われたらどこでも歌うそうなんです。でも、音楽は本来そういうもので、タクシーの車中だってそう。でも、そんなリクエストをされることは私のタクシーで過ごした時間が楽しかったということにもつながる。1人でも多くの方にそう感じてい頂けたら嬉しいですよ」
代表の岩田氏によれば、今後も芸能に特化した採用は続けていく予定だという。
「タクシーの仕事を続けるのもよし、辞めるのも本人の自由です。ただ私としては、彼らに『いつまでもウチにいるようではダメだよ』と発破をかけるようにしているんです」
芸能ドライバーにとってタクシー会社は一時の波止場なのか、それとも――。その答えは、彼らの気の持ちようひとつなのだと感じさせられた。
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