中外製薬ロナプリーブ「コロナ第4の薬」の正体 抗体カクテル療法とは何? 有効性、コストは?

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ただ、一般的に抗体医薬品は高薬価である。既存の抗体医薬品はおおむね1回の注射で安くても2万~3万円、高いものでは10数万円はかかる。ロナプリーブの場合は2種類の抗体医薬品の組み合わせなので1回4万円以上は念頭に置く必要がある。これで対象患者が多くなればなるほど国の財政負担は激増する。

ちなみに前述のようにこの薬剤がウイルスの中和抗体であり、家族内感染の発症予防効果もあることから「ワクチンではなくロナプリーブを使えば良い」という意見も出てくるかもしれないので、念のためにそれについて答えておくと、医学的にも財政的にも現実的ではない。

ロナプリーブで判明している家族内感染予防効果は1回の注射で1カ月ほど。この原理に従えば確実な予防のためには、毎月注射しなければならないことになる。ワクチンが2回の接種で少なくとも半年以上、おおよそ1年程度は感染予防効果があると考えられていることからすると、医学的に見てパフォーマンスが悪い。接種する患者側の苦痛に関して言及しても、年間12回注射の針を刺されるのと、2回で済むのとどちらが良いかの答えはほぼ自明だ。

国民全員に予防的に使うのは割に合わない

また、コストに関してもワクチンは2回の接種で4000円程度。ロナプリープは前述のように1回で4万円以上かかることは確実。現在のワクチン接種対象者は約1億1000万人になるので仮にこれら全員に使うとしたら、ワクチンならば年間4400億円、ロナプリープならば年間53兆円の財源が必要になる。これは日本の国の年間予算(一般会計歳出)の半分に相当する。きわめて非現実的と言わざるをえない。

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いずれにせよ今回登場したロナプリーブは、治療薬としてはこれまでの中でも比較的画期性は高いと言えるし、治療選択肢が増えたことは歓迎すべきことだ。

しかし、限定された投与対象、煩雑な注射薬、高額なコストがかかる抗体医薬品という現実を考えれば決定打とはいえない。また、今後の治療薬開発なのでより簡便かつ安価な経口薬が登場した場合は瞬く間に取って代わられる可能性がある。

村上 和巳 ジャーナリスト

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むらかみ かずみ / Kazumi Murakami

1969年宮城県生まれ。中央大学理工学部卒業後、薬業時報社(現・じほう)に入社し、学術、医薬産業担当記者に。2001年からフリージャーナリストとして医療、災害・防災、国際紛争の3領域を柱とし、『週刊エコノミスト』、講談社Web「現代ビジネス」、毎日新聞「医療プレミア」、『Forbes JAPAN』、『旬刊医薬経済』、「QLife」、「m3.com」など一般誌・専門誌の双方、ネットで執筆活動を行う。2007~2008年、「オーマイニュース日本版」デスク。一般社団法人メディカルジャーナリズム勉強会運営委員(ボランティア)。著書に『化学兵器の全貌』(三修社)、『ポツダム看護婦(電子書籍)』(アドレナライズ)など、共著に『がんは薬で治る』(毎日新聞出版)、『震災以降』(三一書房)など。

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