中外製薬ロナプリーブ「コロナ第4の薬」の正体 抗体カクテル療法とは何? 有効性、コストは?

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一方、まだ適応として承認されたものではないが、これまでに行われた臨床試験の結果からは家族内感染での発症予防効果も認められている。これはアメリカ国立衛生研究所(NIH)傘下の国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)とロシュ社が共同で実施した臨床試験「REGN-COV 2069」で明らかにされた。

試験では4日以内に新型コロナ陽性と判定された人と同居し、新型コロナウイルスに対する抗体が体内に存在しない、あるいは新型コロナの症状がない人が対象。この対象者でプラセボ注射のグループとロナプリーブ1200mg単回皮下注射のグループで「29日目までの症状のある感染者の発生率」を比較したところ、ロナプリーブ・グループでは、プラセボ・グループに比べ、発生率が81%も減少したことが分かった。

また、症状の消失までに要した期間は、プラセボ・グループでは3週間だったのに対し、ロナプリーブ・グループでは平均1週間以内と大幅な期間短縮が認められている。

どのような患者に使えるか?

さて実際、今回の特例承認でどのような患者に使えるかだが、添付文書では新型コロナウイルス感染症で「重症化リスク因子を有し、酸素投与を要しない患者」と定めている。

まず「酸素投与を要しない」とは、ロナプリーブの臨床試験の患者選択基準に基づくと酸素飽和度(SpO2)が93%以上ということになる。酸素飽和度は心臓から全身に運ばれる動脈血の中を流れている赤血球に含まれるヘモグロビンの何%に酸素が結合しているかという指標で正常値は96~99%。肺や心臓の機能が低下して酸素を体内に取り込む力が落ちてくると低下する。

厚生労働省が発刊している「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き」では、新型コロナの重症度を軽症、中等症Ⅰ、中等症Ⅱ、重症の4段階に定め、酸素飽和度93%以上は軽症から中等症Ⅰに当たる。ちなみに軽症とは肺炎は認められず、呼吸器症状も全くないあるいは咳だけ、中等症Ⅰは肺炎・呼吸困難はあるものの呼吸不全(呼吸がうまくできずに他の臓器の機能にも影響が及ぶ状態)には至っていない状態を指す。

もう1つの投与基準である「重症化リスク因子」だが、これも臨床試験での患者選択基準に従うと以下のような因子が指摘されている。

・50歳以上
・肥満(BMI 30kg/m2以上)
・心血管疾患(高血圧を含む)
・慢性肺疾患(喘息を含む)
・1型または2型糖尿病
・慢性腎障害(透析患者を含む)
・慢性肝疾患
・免疫抑制状態(例:悪性腫瘍治療、骨髄または臓器移植、免疫不全、コントロール不良のHIV、AIDS、鎌状赤血球貧血、サラセミア、免疫抑制剤の長期投与)
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