コロナ感染再拡大「五輪の途中中止」はありうるか 政府の感染症対策に精通する専門家の答えは?

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それが、オリンピック開催期間中であっても中止とすることだ、と岡部は断言する。

「方法論として、考えておかなければならない。そういう選択もありうることとして」

緊急事態宣言の発出に伴って、オリンピックの無観客開催が決まった。それについては「有観客にこだわらなかったことはよかった」と岡部は言う。提言書にもあるとおりになった。

だが、そこで次に気になるのが、オリンピックが始まった後の市中感染者の増加だ。競技場のスタンドに人がいないのだから、そこで人から人に感染することはないし、ウイルスが市中に持ち出されることはない。

問題となるのは、その会場の外で飲酒を含めて盛り上がること。政府は金融取引先や酒類の提供元に圧力をかけることによって、飲食店に要請している酒類提供の自粛をより強化しようとした。それが国民の反発で一転、謝罪と措置の取り消しに追い込まれている。

「お酒が悪いのではない」と言い続けてきた

しかし、岡部は以前から「お酒が悪いのではない」と言い続けていた。

「酒のない社会は考えられない。生活の中に染みついているものです。お酒を提供するお店が悪いのではなく、お客さんの飲み方の問題です。お客さんが自制できれば一番いい。

でも、なかなかそうはいかないし、お酒を飲んだり、リスクの高い行動をとって直ちに一人一人が病気なるわけではない。むしろ、かからない人のほうが多いので実感しにくいが、外での飲食の制限を求めることによって全体の感染のリスクが減ることは国内外で言えていることです。

われわれ医学医療の専門家にとっては感染の広がり方だとか、治療法やワクチンの効果だとかが本来考えるべきところであって、酒の飲み方とか酒との付き合い方などは専門的なことではない。

しかし、新型コロナウイルスは経済も文化も含めて『社会の病』になってしまって、ある程度はみんなで抑え込まなければいけなくなった。医学的にも社会全体で病気を良い方向に向けるためには口を挟まざるをえないというところで、私自身はすべてをひとくくりで禁止するよりも、飲み方、食べ方、しゃべり方を考えて、店側にしても客側にしても、もっと上手にやるべきではないかと思う。酒にしても娯楽にしても、やり方の問題だ」

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