東大教授が教える「世界が求める頭の良さ」の定義 ネオヒューマンが示す「汎用的」な問題解決力

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闘ってみてどうなるかなあ、なんて思っていては闘えません。彼には、これまで未踏の領域を切り拓いてきた「自信の蓄積」がある。いつも自信がみなぎっているからこそ、つねに難局に向かえるんですね。この本は「自信をどうつけるか?」がテーマの本だと言ってもいいと思います。

研究者の中で、彼のようなところまで達する人はなかなかいません。研究の中でいちばん大きな壁は、お金の問題です。そして、研究成果を発表しても、それが社会で認められ、使われるかどうかという壁もあります。

それができるピーターさんは、ある種の天才でもありますね。芸術的素養もあり、文才もある。人を惹きつけるスピーチもできるし、いろいろな問題解決のアイデア、工夫が思い浮かぶ。レオナルド・ダ・ヴィンチのような万能さがありますね。

やりたいことを徹底してやろう

ダ・ヴィンチのような天才は、今でも時々出てきていますが、やはり、昔よりは少なくなったのではないかと思います。

その原因の1つは、受験のシステムでしょう。親が天才児を東大に入れたいと考えて、「余計なことはせずに受験勉強だけをしなさい」と仕向けてしまうのです。これは世界的に起きている現象です。

すると、真面目な子どもはそれに従ってしまい、普通の学校教育に適したものにしか対応できなくなります。その結果、本来、その人が発揮できるはずだったさまざまな才能の芽が摘み取られてしまうのです。

ピーターさんのように、「なにがなんでもやってやる」という意志を持っていれば突破することができますが、それがないと、親や教師に従うだけになります。

やはり、子どものときに、やりたいことを徹底的にやらせなければダメなんですよ。東大生には、やりたいことを捨てて育った学生が多くいます。本当にもったいない。

そういう視点から見れば、ピーターさんには、まず、同性愛者であるという、どうしても我慢のできない、覆い隠すことができない欲求があった。それを子どものころ、自分の中に見つけた瞬間に、「周りの人の意見を聞いていては、生きていけない」という強いものが生まれたわけです。そこから舵を切り、彼は人生を大きく変えていった。

ですから、誰しも自分の中に、何らかの強い欲求を見つけることができれば、彼のような人間に育っていくことができるかもしれません。

本当は、みんなにそういうものがあるはずなんです。セクシャリティの話だけではなく、好きな学問でも、芸術でも、なんでもいい。でも、そういうものを持ってはいけないという教育をしてしまうと、抑えられてしまいます。

しかし、日本も最近、いいなと思うことがあります。

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