東大教授が教える「世界が求める頭の良さ」の定義 ネオヒューマンが示す「汎用的」な問題解決力

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ALSという大病を抱え、失望してしまう人が多いなかで、同じ病気を持つ人々に対して、少しでも明るい希望を持てるよう、自分自身の体を「研究対象」と捉えて、実証実験を行っていく。そして、AIの発展に寄与して社会貢献していこうとする。この研究者魂は、ある種、研究者のあるべき姿とも言えるでしょう。稀有な人です。

さらに、「こうなったらいいよね」という夢物語で終わらせていないのも彼のすごいところです。

研究をまっとうするには、何よりもお金が必要です。お金集めは、一般的には研究者の苦手分野ですが、ピーターさんは違います。

私がコンタクトを取った巨大企業のうち、勇気とリーダーシップ(あるいは大企業としての責任感や義務感?)を発揮して私の呼びかけに応えてくれたのは2社だった。それだけでも十分すぎる成果だ。
1社は、言うまでもなくDXCだ。そしてもう1社、偉大なるインテルからもメンバーが参加してくれた――かのスティーヴン・ホーキング博士と組んでいたチームだ。さらに、セレプロック、エスターの同僚たち、アバターの開発に取り組んでくれている大勢のエキスパート、そして財団の中心メンバーたち。その全員が一堂に会したのである。
『ネオ・ヒューマン』より引用

世界の超優秀な研究者を仲間にして、それを動かすために財団を作り、大企業の協力を得るということまでしっかりと考えている。お金の集め方を自分で考えているんですね。

良い意味での「悪知恵」とも言えますが、なかなか働くものではありません。発想がすごい。そういったことを思いつくということ自体が、「生きていく上での頭の良さ」とも言え、それが彼の力でもあるでしょう。

専門バカを脱却し、推論エンジンを持て

ALSではないかとわかってきたとき、ピーターさんは、徹底的に論文を読んでALSについて調べています。

中須賀 真一(なかすか しんいち)/東京大学航空宇宙工学専攻教授。専門分野は宇宙工学と知能工学。世界初の1kg衛星をはじめ13機の超小型衛星の打ち上げに成功している。1961年、大阪府生まれ。83年に東京大学工学部航空学科卒業。88年に同大学院博士課程修了。その後、コンピュータメーカーに就職し、人工知能や自動化工場に関する研究を行う。90年に東京大学に戻り、航空学科講師、同大学先端科学技術研究センター助教授、アメリカでの客員研究員を経て2004年に現職(写真提供:筆者)

ロボット工学が専門の彼にとって、医学論文は専門分野ではありませんが、それを読み切る能力の高さと努力が彼にはあります。

違う分野に入っても、そのナレッジを吸収し、問題を解決する能力。ここが、彼の成功につながっているとも思います。

AIの説明としてよく言われることですが、まず、問題解決のための推論エンジンがあり、そのエンジンに沿って、必要なデータベースをその都度作り替えて入れてゆけば、いろんな分野に応用できる人工知能になります。

まさにピーターさんは、この「推論エンジン」を身につけています。だからALSの世界に入っても、ALS対策をすぐに考えることができた。

大学の博士課程における重要な素養も、実はここなんです。

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