第1に、候補地を「3か所程度」と具体的に絞っていることだ。大阪と沖縄がほぼ当確、ただし「お台場カジノ構想」の東京は入っていない。記事は「舛添要一都知事はカジノ誘致の消極的な見方を示しており、政府が東京をカジノ整備地に指定する可能性は低い」と断定している。おそらくこの記事のネタ元は官邸だろうが、舛添氏に対する不快感をそこはかとなく表しているようでもある。先の都知事選において、この件について双方にどんな了解があったのか、少々気になるところである。
とはいえ、東京都の立場もわからないではない。東京都は「五輪開催」という大目標を背負っている。なおかつ、歳入にはそんなに困ってはいない。「カジノにまでは手が回らん」というのが正直なところなのではないか。かといって、東京五輪の際には確実に外国人観光客が増えるだろうし、カジノに投資する側も関東に作らないという手はない。だとすると、「海外から豪華客船が入港する横浜市」が有力になりそうだ。
他方、大阪には人工島の夢洲という絶好の候補地がある。かつては五輪誘致を目指した場所だが、今は使われていない。関空から近くてアクセスも良い。そして財政難の大阪府と大阪市にとって、カジノがもたらす税収は干天の慈雨だろう。さらに言えば、関西には世界遺産が多く、京都、奈良、神戸などの近隣自治体も、外国人観光客の増加というメリットを享受することができる。
沖縄について言えば、これはもう候補地として外せない場所である。沖縄がアジアにおける国際的なリゾート地の一角を占めるためには、カジノという選択肢を「持たざるリスク」は看過できない。さらにタイミングによっては、「米軍基地の跡地利用」という選択肢が浮上するかもしれない。
政府が目指すのは、シンガポール型
今回の記事で目を引く第2点目は、「政府がモデルにするのは、数多くのカジノが乱立するラスベガスやマカオではなく、ホテルや会議場、ショッピング施設など大型リゾート施設の一角に、少数のカジノを併設するシンガポールだ」と明らかにしていることだ。
現在、国会には「統合型リゾート法案」(通称IR法案=Integrated Resort)がかけられている。昨年の臨時国会で提出され、今春の通常国会では会期切れ直前に形だけ審議され、この秋の臨時国会への継続審議となっている。
この法案は自民、維新、生活の3党による共同提案である。ちょっとありえない組み合わせに思えるかもしれないが、実をいうと公明、民主、みんなにも超党派のIR議連の参加者がいて、ぶっちゃけ共産党と社民党以外はほとんどが賛成、と言っても過言ではない。
これだけ多くの政党がカジノに「相乗り」しているのは、もちろん総額で1兆5000億円(ゴールドマン・サックス社予測)とも言われる経済効果に期待してのことだ。しかし、何よりもシンガポールがここ数年で実現したサクセスストーリーが、この夢に説得力を持たせている。
シンガポールの名所と言えば、ちょっと前まではマーライオンであった。あれは札幌の時計台に劣るとも勝らない「世界がっかり観光名所」の代表格であった。ところが今では、誰もがマリーナ・ベイ・サンズを思い浮かべるだろう。3つのホテルの上に巨大なプールが乗っかっているアレである。
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