実はあのホテル部分は、「統合型リゾート」のごく一部にすぎない。ショッピングセンターやアトラクション施設なども併設されていて、その中にはカジノも含まれている。アメリカのラスベガスサンズ社が、約5000億円を投資して2010年に完成した。たちまち金持ち中国人が大挙して押し寄せ、シンガポールの外国人観光客数は6割増しの1550万人、観光収入は8割増しの1兆8400億円となった(いずれも2013年実績)。
シンガポールがカジノ設立に踏み出したのは、意外にも1999年の東京都知事選挙で石原慎太郎氏が「お台場にカジノを」と言い出したことが契機であった。「東京にカジノが出来たら、アジアの観光客は総取りされてしまう」との危機感から、シンガポール政府は世論の反対を押し切って5年で法体系を完成させ、5年で建築にこぎつけた。
ちなみにシンガポールのカジノでは、外国人はフリーパスだが、国民に対しては1日8000円、年間パスだと16万円程度の入場料を課している。それでもオッケー、という人だけを相手にしているわけだ。
日本でカジノが解禁される場合も、同様な形態が使われるだろう。なんとなれば、日本にはパチンコという巨大ゲーム産業がある。そこは微妙に「棲み分け」が必要になってくるのである。常に「治安と依存症対策」を求められるカジノ産業としても、あまり敷居を低くするのは考え物である。競馬でいえば、指定席券を買ってくれる人以上がお客さん、といったところだろうか。
20人の準備組織がすでにできあがっている?
同記事の第3のポイントは、7月中旬に省庁横断型の準備組織が立ち上げられたことを報じていることだ。IR法案は議員立法なので、どの省庁がカジノを担当するかがまだ決まっていない。ところが、内閣官房にはすでに経済産業省、国土交通省、警察庁などから、約20人の準備組織が立ち上がっているという。議員立法の成立後に、1年程度をかけてカジノ運営のルール作りや法整備にあたるのだそうだ。
とはいえ、新たなカジノ組織は農水省傘下のJRAのように、どこかの官庁の外郭団体になるわけではない。海外の民間カジノ事業者が参入し、たぶん日本企業との合弁という形をとって、それをラスベガスと同様な委員会方式で規制する方式となる。
ちなみに、ラスベガスがマフィアの影響力から脱するようになったのは、1959年にネバダ・ゲーミング・コントロール法が作られ、厳しい管理と監視が行われるようになってからである。
おそらく多くの人が誤解しているのはこの点で、IR法案が目指しているのは単純に「新たなギャンブルの種目として、日本でもカジノを認可する」ことではない。ラスベガスが長い歴史とともに発展させてきた、総合エンタテインメント産業としてのカジノを日本に導入することである。
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