早稲田政経が粉砕「数学不要論」の先にある大革命 「暗記中心」の教育から脱却してプロセス重視へ

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それは、「速さ・時間・距離」の問題を、速さの意味を理解しないまま形式的に「は・じ・き」なる公式に当てはめる解法と同じで、「比べられる量・もとにする量・割合」の問題を、割合の意味を理解しないまま形式的に解こうとする癖がついてしまった生徒が多いのである。

だからこそ、全国学力テストの算数の問題(6年生用)に%の問題が出題されるたびに、極端に悪い成績となる。

たとえば、2012年の全国学力テスト(全国学力・学習状況調査)に次の問題が出題された:「赤いテープの長さは120 cm」、「赤いテープの長さは、白いテープの長さの0.6倍」という前提で、その意味を示す図を4つから選択させる問題。4択の問題にも関わらず、正解率は34.3%であった。

影響が大きい「教育格差」と「理解力の差」

実は、「やり方」の暗記だけの学習を深刻に受け止めるようになったのは、22年間の数学科教員を経て現在の桜美林大学リベラルアーツ学群に移ってから数年後に、就職委員長を歴任したときである。

当時は、大学卒業生の就職難が続いているときで、多くの学生が苦手とする「非言語適性検査」の問題の基礎となる算数・数学の考え方の特別授業として、後期の毎週木曜日の夜間に「就活の算数」ボランティア授業を1~2コマ開催したのである(計算規則、速さと割合、図形の面積・体積、関数のグラフ、確率の概念、論理と集合、等々の内容)。

その授業を通して注目したことは、多くの学生は小学校の算数から高校の数学まで暗記中心の教育を受け、理解するように教えられた経験がほとんどないことであった。この点が、数学科に入学してくる学生と根本的に違うことを悟ったのである。

その後も、理解を無視して暗記で誤魔化す学びと指導をなくす必要性を痛感し続けたこともあって、昨年末に『AI時代に生きる数学力の鍛え方』(東洋経済新報社)を上梓した。とくに、数学は理解して初めて応用力や発想力が育まれること、さらには「理解力」は「暗記力」と違って個人差が激しいことを訴えた。

以上から、数学の学びを大切にする流れを本格的なものにするためには、「教育格差」と「理解力の差」を十分に鑑みて対策を講じるべきである。だからこそ、復興期の数学教育に戻すことには反対なのであり、なるべく個々の状況に応じる数学教育を望むのである。

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