早稲田政経が粉砕「数学不要論」の先にある大革命

「暗記中心」の教育から脱却してプロセス重視へ

そもそも数学は、「数」という客観的なものを用いてきちんと論理的に説明することが礎にある。それゆえ数学で培った説明力は、立場の異なる人たちとの議論が前提となるグローバル化の時代では必須の素養となっている。

オリンピックを直前にした現在、「感情や理念で訴える日本の政治家の姿勢はそろそろ限界ではないか、もっと数字を使って論理的に説明する政治家が、いま日本では求められているのだろう」という意見が増えている。

また、IMD(国際経営開発研究所)の「世界競争力年鑑」を見ても、1990年代前半には1位であった日本の順位は、2020年には34位まで落ちてしまったこと。その間に世界でトップクラスにあった日本の所得水準も、同様に下がったことの報道もある。これらは、戦後の復興期を力強く生きてきた世代からすると、我慢できることではないだろう。

「数」と「論理」を柱とした改革への期待

要するに現在は、政治・経済の両面からも「数」と「論理」を柱とした抜本的な改革が期待されているのであり、早大政治経済学部の入試改革はその始まりと捉えたい。そこで思い出すのは、明治維新を成し遂げた多くの志士を松下村塾で育てた吉田松陰の次の教えである。

「算術は此頃(このごろ)武家の風習として、一般に士(さむらい)たる者は、如斯(かかる)ことは心得るに及ばずとて卑しみたるものなりしに、先生は大切なる事とせられ、・・・先生は此算術に就(つい)ては、士農工商の別なく、世間のこと算盤珠をはずれたるものはなし、と常に戒(いま)しめられたり。」(吉田庫三著、『吉田松陰先生』(政教社1908年)を参照)。

その教えは明治・大正・昭和と受け継がれ、戦後日本の復興・発展に寄与した人たちの多くは、日本の数学教育に誇りをもっていた。実際、先の大戦中の「特別科学学級(特別科学組)」の理数系教育は世界に誇れる英才教育であった。

特別科学学級で学んだ方々には、後に理系・技術系の分野で活躍した人たちは当然多くいたが、財務大臣を歴任した藤井裕久や野村総合研究所理事長を歴任した鈴木淑夫らのように、その他の分野で活躍した人たちも少なくなかった。

筆者は数学教育活動を始めて間もない1990年代後半に、鈴木氏から特別科学学級で学んだ高度な数学が人生に相当プラスになったことを書いた文をいただき、「私大文系は数学が不必要」という迷信を過去のものにする誓いを立てたことを思い出す。

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