早稲田政経が粉砕「数学不要論」の先にある大革命

「暗記中心」の教育から脱却してプロセス重視へ

冒頭で触れた東洋経済オンラインの拙文では、1980年代後半から数学を除外する少科目入試に至ったのは、表向きは「個性尊重」でも実際は「見かけ上の偏差値アップ」である、との立場から具体的な数値を交えて説明した。その少科目路線は、トップクラスの大学入試から始まったものであり、他の私立大学は理念などかなぐり捨てて少科目入試を導入したのである。

現在は逆に、早大政経学部に続く有力私立大学が何校か現れることによって、数学の学びを大切にする流れは本格的に動き出すだろう。しかし、注意すべき要点がいくつかあることを以下指摘したい。

戦後の1970年代前後までの復興期においては、高校生全員が高校数学II・Bレベルまでを必須科目として履修していた。文系進学や高卒として就職していた人たちでも、のべ9単位を必須科目として数学を履修していた。

ちなみに「ゆとり教育」時代の高校数学の必須科目の単位数は0単位である。選択必修としての「数学基礎」(2単位)を履修すれば卒業できたのである。現在は必須科目の単位数は3単位(数学I)で、それを履修すれば卒業できる。もっとも同じ数学Iでも、履修内容は復興期のそれの6分の1程度である。

復興期のような数学教育に戻さなくていい

筆者は、復興期のような数学教育に戻すことには、以下の理由から反対する。当時の教育は国の再建のためにとった横一線の緊急措置の面があったのであり、多くの国民も「国の復興のために全力で努力する」という特別な意識をもっていた。

ちなみに当時、小松製作所では統計数学のχ(カイ)二乗分布を高卒の職員に教えて品質管理に応用したほど、高卒のレベルも高かった(『新修文系・生物系の数学』梶原譲二著、現代数学社、1988年)。

筆者のゼミナール出身の中高の数学教員は全国で約200人いるが、経済格差が教育格差につながっていることを背景に、現在は算数の復習程度の理解で高校を卒業せざるをえない生徒は想像以上に多くいるという報告がある。また、私立大学文系学部の総合型選択入試(旧AO入試)の面接で、「2億円は50億円の何%ですか」という質問をすると、2割以上は間違える実態もある。

よく、「それは国語の問題ではないか」という指摘がある。確かに「~に対する…の割合」という表現はいろいろな表現方法があるので、その指摘は当たっている面はある。しかし、理解せずに「やり方」の暗記だけの学習が問題の本質であると訴えたい。

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