コロナで注目、企業間「人材シェア」普及への壁3つ 「要らない人材」放出の場になっては意味がない

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今後、人材シェアが進むとした場合、我々はその中でどのように生きていけばいいのだろうか。まずは人材シェアのポジティブな側面をきちんと理解することが重要となる。

直近ではコロナ禍を受けて、人材シェアが労働需給調整の目的で行われているケースが目立つが、もちろんそれ以外にも企業・働く人の双方にとって多くのメリットが存在する。ここでは四つのメリットを紹介したい。

一つ目は、自社だけでは難しい職業能力開発が行えるという点である。他社の持つ専門性などを獲得する機会を得ることができる。

ポストの「空き待ち」という無駄もなくせる

二つ目に、自社内でポストが無い場合にも、他社のポストに就き、経営指導・技術指導などのマネジメント経験を積むことができる。自社内でポストが空くまでの期間を無為に過ごす必要はなくなる。三つ目に、自身の市場価値を客観的にチェックする機会となりうる。

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自身の能力・経験が他社でどの程度通用するかを知ることで、今後のキャリアを見直すきっかけを得ることができる。最後に、人的ネットワークの広がりである。複数企業等でのヨコのつながりの中で、様々な情報交換が可能になる。

今後、人材シェアを積極的に自身のキャリアの中に組み込み、企業等の枠を超えて成長した人材が、より重宝される時代が訪れる。人材シェアの時代には、企業等は自社の社員を社外に送り出す覚悟を持ち、働く人は自ら企業等の枠を超えてキャリアを形成する勇気を持つことが重要となる。

志村 太郎 野村総合研究所 社会システムコンサルティング部 プリンシパル

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1987年、東京都荒川区生まれ。東京大学農学部を卒業後、2010年に野村総合研究所に入社。経営コンサルティング部などを経て現職。専門は、人材マネジメント、経営管理・経営改革、公共領域における政策実行支援など。

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