日本人の「投資への高すぎる壁」壊す逆転の発想 必要性を訴えるより「行動経済学」を応用しよう

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(写真:Fast&Slow / PIXTA)

NISA(少額投資非課税制度)、iDeCo(個人型確定拠出年金)など、さまざまな個人向けの金融資産形成支援策が打ち出されてきたが、日本における個人金融資産は依然として預貯金偏重が続いている。

*金融資産とは、現金・預貯金・株式・債券・投資信託・生命保険や小切手などを指す。

普通預金の金利は年0.001%(三菱UFJ銀行、2021年3月18日現在)、つまり100万円を1年間預けても利息は10円しか発生しないことになる。このような低金利にあっても、日本人の投資意欲は低いままという訳だ。

「強い貯蓄志向」の理由

野村総合研究所では調査研究などを通じて、日本人の「強い貯蓄志向」の理由を探ってきた。そこで浮かび上がってきたのは、深く日本人の心に刻み込まれた「成功体験」である。

1990年初頭のバブル崩壊まで、銀行金利は5%程度と高く、地価の上昇率は株価のそれより高かった。要するに、預貯金や土地を中心に財産をもったおくことが「賢い判断」だったのだ。

そしてその後の株価暴落は、「汗水たらして貯めた」お金を、目減りするリスクのある「ギャンブルのような」株などに投じるなんて「もってのほか」という、「現金信仰」を強くさせた。

なお、日本銀行「資金循環の日米欧比較」によれば、米国の家計金融資産に占める投資(株式・債券・投資信託)割合は約50%であるのに対し、日本はわずか14%である。

また、米国人が所得(家計可処分所得)の約18%を利子や配当から得ているのに対し、日本人はわずか5%である(内閣府「国民経済計算」、US Bureau of Economic Analysis「Personal Income」
)。

1,800兆円にも上る日本人の個人金融資産を、投資を通じて成長著しい海外の国や地域などに向かわせ、「経済成長の果実」を国民に届けるための「国策」が求められている。

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