日本人の「投資への高すぎる壁」壊す逆転の発想 必要性を訴えるより「行動経済学」を応用しよう

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投資の裾野が広がらない理由を細かく見ていくと、「投資知識を得るのが難しいこと」、「証券口座を開く手続きが煩わしいこと」など、いくつものハードルがある。

素直に考えると、これらのハードルを下げるアプローチをとってしまう。例えば、「難しい投資を簡単に伝えるコンテンツの充実」や「口座開設手続きを簡単にする仕組み」といった具合だ。
しかし、これらはどれも大切だが、やり尽くした感があるのもまた事実である。

むしろ今考えるべきは、こういった一つ一つの工夫をより効果的にするために、もっと「根っこの部分」に働きかける施策ではないか。ポイントは、ハードルを乗り越えるサポートではなく、ハードルをハードルと感じさせない環境作りだ。

ここでいう「ハードルと感じさせない」とは、「証券保有を日常的なものにする」という意味だ。

「証券を持つこと」を、特別な勉強をした人(=ハードルを乗り越えた人)だけが体験するものではなく、電気や水道のように、日常生活に溶け込んだ「あたり前のもの」にすることである。

日本「総投資家化」構想

こういった環境作りの決め手になると筆者が考えているのが、「ベーシック・アカウント構想(BA構想)」である。

BAとは、政府・自治体などから受け取った証券を「受け取って持つだけ」の器である。

通常の証券口座のように、買ったり売ったりするための口座ではない。
もし証券を売買したい場合は、証券会社等の口座に証券を移管してから行うことになる。

「持つだけ」という極めてベーシックな機能しかないので、「ベーシック・アカウント」と呼んでいる。

この器を、日本人全員に自動的に付与するという考えが、BA構想だ。

「受け取って持つだけの空っぽの器?一体何に使うのか?」と思われる方も多いだろう。

ただ、よくよく考えてみると、使い道はけっこうある。

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