実戦!地頭力(中) 行列の待ち時間を計算するには 地頭力を鍛える

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 昨年1年間で1億2000万本を売り切ったファミリーマートのフライドチキン。同社が販売を始めた2001年当時、まだセブン-イレブンは取り扱っていなかった。王者セブンのモデルを追うことで成長を続けてきたコンビニ業界では、「セブンができないことはできない」というのが業界の常識。だが、これは実は「思考のクセ」にすぎなかった。

ファミリーマートの「切り口」は、スーパーの中食分野の台頭に押され、売り上げが伸び悩んでいたコロッケなどのファストフード(FF)の立て直しという命題であった。コンビニの標準的な店舗面積はわずか40坪で、スーパーの「縮小コピー」では対抗できない。既存商品の強化ではなく、ファストフード全体を突き上げるような強力な新商品が必要だった。

そこで、FF開発チームはヒットのための条件をフレームの中に埋め込んでいった。それは、認知度が高く、既食性があり、手頃な価格で展開できるという三つの要素。加えて、店舗に装備されている既存のフライヤーを活用できる商品は何か。開発チームが選んだのがフライドチキンだった。

「フライドチキンを展開する外食チェーンはケンタッキー(KFC)ぐらいで、店舗数も1000店程度にとどまっていた。ファミリーマートが全国6000店で販売できれば、必ず潜在的な需要を掘り起こせると考えた」。FF商材の開発を担当する商品本部の押元宏文氏は、開発当時の仮説をこう振り返る。

チームは当初から壁に突き当たった。たとえば、1日にチキンを1店当たり15本売ると、全店で1日10万本、年間で3500万本に達する。それだけの食肉処理能力を持つサプライヤーを見つけるのは至難の業だった。そんな中、タイで紹介されたサプライヤーではEU向けに胸肉とささみを輸出し、日本人が好む「もも」や手羽は「余り物」だった。タイも「余り物」の消費に困っており、両者の利害が一致した。

「フライドチキンのスタンダードはKFC」というのも思考のクセにすぎなかった。ファミリーマートのフライドチキンはフレームワーク思考の好例といえる。

取材協力(敬称略)
東京大学大学院准教授・西成活裕、ファミリーマート商品本部・押元宏文

(週刊東洋経済編集部 撮影:吉野純治、尾形文繁、風間仁一郎、鈴木紳平、田所千代美、今井康一、山内信也)

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