「リベラル」こそ「ナショナリスト」であるべき理由 日本に「民主主義」を取り戻すために必要なこと

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詳しくは、中野剛志氏施光恒氏による解説を参照してもらいたいが、ひとことで言えば、現在、アメリカの「保守」は、「グローバリズム」から「ナショナリズム」へと、方針を転換しようとしている。

従来の「保守」による新自由主義やグローバル資本主義の推進は、国内に絶望的な経済的格差をもたらし、大多数の国民の生活を激しく荒廃させた。そして、国境を越えてグローバルな経済活動を営む一部の「エリート」と、生まれ育った土地で土着的な生活を営む大多数の「庶民」との間に、架橋しがたい「国民の分裂」を招いてしまった。

そこで、「保守」はいまや、庶民を食い物にして一部のエリートにばかり恩恵をもたらすグローバリズムと決別し、もう一度「国民」の連帯を回復して、「国民」の生活をこそ守らなければならない、というわけである。

このアメリカの「新しい保守主義」を牽引する代表的人物の1人がハゾニーであり、その思想はトランプ前大統領の政策にも大きな影響を与えたという。

トランプが掲げた「アメリカ・ファースト」は、確かに過激で粗野な表現ではあったが、思想的には、このような文脈と意味での「国民主義」としての「ナショナリズム」に基づいたものであった。だからこそ彼は、とりわけ「グローバリズム」によって生活を荒廃させられた、失業者や低所得者の圧倒的な支持と期待を集めたのである。

「グローバリズム」と化した「リベラリズム」

ところが、「リベラル」のほうは、トランプを「危険なナショナリスト」とみなして攻撃し、しかも、彼を支持した庶民・大衆に対しても、無学で理性を欠くがゆえにトランプの扇情的なパフォーマンスにまんまと踊らされたのだと、侮蔑のまなざしを差し向けた。わが国の「リベラル」なマスコミや知識人もそうであった。

「リベラル」が、本当に弱者の側に立ち、不条理な格差を是正して平等な社会の実現を目指すのであれば、彼らこそが「ナショナリズム」を自覚的に引き受け、「グローバリズム」から「国民」の生活を守るという決意を、はっきりと示さなければならなかったはずである。

しかし、「リベラル」はそうしてはこなかった。なぜか。

ここには、戦後の「リベラリズム」というイデオロギーがはらんできた、根本的な倒錯がある。

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