「ナショナリズムは危険だ」と誤解されがちな理由 帝国や無政府状態よりも優れている「国民国家」
誤解されがちな「ナショナリズム」
戦後の日本では、「ナショナリズム」というと、偏狭で排外的な、ともすると軍国主義につながりかねない危険な思想だと思われがちである。これは日本だけではない。第2次世界大戦のナチス・ドイツによる蛮行がナショナリズムに帰するものとされ、世界的にも、排他主義的な思想とみなされるようになった。
イスラエルの政治学者で聖書研究家のヨラム・ハゾニーは、それに異を唱える。著者が本書を著したのは、わたしたちがナショナリストの立場をとるべき理由を述べるためだ。著者によれば、ナショナリズムとは、「ネイションがそれぞれ独自の伝統を育み、干渉されることなくそれぞれの利益を追求し、それぞれが独立した針路を定めることができるとき、世界は最良の形態で統治されるという原則に基づく立場」である。
ネイション(nation)は、「国民」や「民族」と訳されることが多いが、本書では「共通の言語や信仰をもち、防衛やそのほか大規模な事業のために一丸となって活動した過去を共有する、多数の部族(tribe)」からなる集団と定義づけられていることもあり、「ネイション」とカタカナで表記することにした。
本書の第1部「ナショナリズムと西洋の自由」では、西洋の政治で長年対立が続いてきた2つの政治秩序のビジョンが比較される。1つは自由で独立したネイションの秩序(国民国家)。もう1つは唯一の超国家的権威による、単独の法体系下で結合した人々の秩序(帝国)である。
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