イスラエルの哲学者が「トランプ」を動かした訳 米国保守主義再編や欧州ポピュリズムにも影響
新しい保守主義のマニフェスト
本書『ナショナリズムの美徳』は、グローバル化の必要性が叫ばれ続け、また同時にグローバル化が各国で格差拡大や国民の分断などさまざまな問題を引き起こしている現代世界において必読の書物である。
著者のヨラム・ハゾニー氏はイスラエルの政治哲学者、聖書研究家である。1964年にイスラエルで生まれたが、アメリカで育ち、プリンストン大学を卒業し、ラトガーズ大学で政治哲学の博士号を得ている。
本書は、現代のアメリカの保守思想に大きな影響を与えている。
たとえば、トランプ政権の国家安全保障会議(NSC)の報道官を務めたマイケル・アントン氏は、2019年4月に「トランプ・ドクトリン─政権内部の人間が大統領の外交政策を説明する」(“The Trump Doctrine: An Insider Explains the President’s Foreign Policy”)という論説を外交誌『フォーリン・ポリシー』に発表したが、そのなかでトランプ政権の外交政策の基盤とされ、再三、引用されたのが本書だった。
また、政治ジャーナリストのダニエル・ルーバン氏も、ネオコン(新保守主義)や新自由主義に代わる新しい保守主義の潮流の中心的人物として、ハゾニー氏を挙げ、本書を「右派知識人のマニフェスト」の位置にあるものだと論じている(“The Man Behind National Conservatism,” The New Republic, July 26, 2019)。
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