「リベラル」こそ「ナショナリスト」であるべき理由 日本に「民主主義」を取り戻すために必要なこと

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これはまぎれもない一個の「帝国主義」である、とハゾニーは言う。「リベラリズム」は、グローバル化=帝国主義化することによって、「リベラル」というみずからの価値を裏切っているのだ。

したがって、むしろそれぞれの国民や民族の文化や価値観の多様性と自立性を認め、それを相互に尊重し合う「ナショナリズム」の原理のほうが、真に「リベラル」なのである。

「ナショナリズム」は「帝国主義」に抵抗する

これは重要な論点なので、もう少し敷衍(ふえん)しておきたい。

「ナショナリズム」こそ、人々に特定の文化や価値観を押し付けて「同化」を迫り、価値の多様性を破壊してきたではないか。これが一般的な「ナショナリズム批判」である。

しかし、考えてみてほしい。

たとえば、戦前の日本は、アイヌや沖縄、さらに韓国や台湾の人々に対して、日本語や日本文化を強制し、彼らの伝統的な言語や文化を奪ってきた。たしかに、これは許されないことだ。

しかし、なぜ許されないのか。それは、この「同化主義」の政策が、まさに彼らの「ナショナル」な(または「エスニック」な)文化や伝統を破壊し、それに対する彼らの誇りや自尊心を傷つけたからにほかならない。

つまり、彼らの「ナショナリズム」を破壊したことこそが、許されないのだ。

彼らの「ナショナリズム」を破壊したのは、日本の「ナショナリズム」ではない。そうではなく、日本の「帝国主義」が、それを破壊したのである。

「帝国主義」と「ナショナリズム」とを同一視してはならない。両者はむしろ正反対であり、「ナショナリズム」を破壊するからこそ、「帝国主義」は許されないのだ。

本当の「ナショナリスト」は、みずからの「ナショナル」な(または「エスニック」な)文化や伝統を大切に思うからこそ、ほかの国民や民族にとってもそれは同じであると考え、ゆえに、ほかの国民や民族にみずからの文化や言語を押し付ける「帝国主義」こそ、最悪の思想であると考えるのである(たとえば、日本の「民芸」、すなわち民族的な文化や芸術を誰にもまして愛した美学者・柳宗悦が、それゆえにこそ、沖縄や韓国の言語や文化を奪う「帝国」日本の同化政策に激しく抗議したことを想起しよう)。

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