混迷の東京五輪「選手をサポートする企業」の本音 企業がスポーツ選手を支援する長期的な狙い

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「『宏実選手を支援してほしい』という話が2007年にありました。彼女は当時、法政大学在学中。ウエイト選手の場合、自衛隊などに就職して競技を続けるケースが多いのですが、彼女は企業入社を希望していた。そこで人柄や仕事意欲を踏まえて入社を決定。ほぼ同時期にウエイトリフティング部を創設しました。彼女らの存在が会社の活力につながると確認できたこともあり、現在は5人に増えています。2013年にはライフル射撃部、2016年には陸上部も創設。総勢15人のスポーツ系社員選手が在籍するようになりました」(木村氏)

いちごは70歳定年制。仮に30歳でアスリートを退いたとすれば、40年間は就業するのが前提となる。実際、過去の引退選手全員が会社に残ったわけではないが、営業や事業などで活躍する人材は少なくないようだ。

「一芸に秀でるアスリートには大きなポテンシャルがあります。謙虚な姿勢、学ぶ意欲、体力面といった長所は必ず社業にも還元できる。『五輪ありき』という考えはありません。Jリーグに関しても、地域に根差した活動を一緒に行いたいという意向が合致してスポンサー契約に至った。現在は経済産業省とスポーツ庁が主導する『スタジアム・アリーナ構想』に基づいて、土地・建物の有効活用も進めていますし、ビジネス的な広がりもある。『広告効果』を期待した投資ではないことを強調しておきたいですね」(常務執行役 吉松健行氏)

内村航平と所属契約を結んだジョイカルジャパン

トヨタ・いちごのようなスタンスだと、アスリート側も「社員」の自覚をもって入社し、いずれは社業をこなす覚悟を持つことが必要になってくる。そうやってアスリートと会社が「ウィン・ウィン」になって初めて永続的な関係が構築できる。それは今年3月から体操界のスーパースター・内村航平と所属契約を結んだ急成長中の自動車販売グループ・ジョイカルジャパンも意識する点だ。

ジョイカルジャパンは内村がコナミスポーツを退社し、外食大手・リンガーハットと所属契約を結んだ2017年からスポンサーとして彼をサポートしていた。が、コロナ禍でリンガーハットの業績が急激に悪化し、支援継続が難しくなったことから、新たな所属契約先として名乗りを上げた格好だ。

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