混迷の東京五輪「選手をサポートする企業」の本音 企業がスポーツ選手を支援する長期的な狙い

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「わが社は長年、社業とスポーツを『一心同体』と捉えてきました。リーマンショック後の2010~2012年にかけては東日本大震災やタイの大洪水発生など大規模な自然災害が相次いで発生。工場稼働に支障が出るなどの影響が出て、業績も大幅に落ちました。それでも運動部を廃部にするという議論は一切、出ませんでした。

彼らも会社全体の期待に応えようと全力を注いでくれた。女子ソフトボール部が2010年から3連覇を達成し、陸上部も2011年元日のニューイヤー駅伝で優勝するなど、結果を出してくれました。豊田章男社長もスポーツの存在意義の大きさをつねづね口にしていますし、それは東京五輪を取り巻く困難が起きても変わることはありません」と総務・人事本部の東崇徳副本部長は力を込める。

同社のように運動部の活動を何十年も継続させるのは、企業にとって容易なことではない。高度成長期に活況を呈した社会人野球を例に挙げると、1998年時点では142チームが登録されていたのに、現在は97チームに減少。女子ソフトボールにしても、1986年の149から現在は30チームへと激減している。

セカンドキャリア支援の充実

このように企業スポーツの縮小傾向が強まる中、トヨタは全選手を社員として雇用している。硬式野球部、陸上長距離部、ラグビー部、女子ソフトボール部、女子バスケットボール部、スケート部、ビーチバレー部は、日本一を目指して強化に取り組む「強化運動部」として活動。総勢168人が活動している。一方で社業と両立しつつ競技に取り組む「一般部」も26あり、こちらは合計424人の選手が活動している。

「トヨタは1兆円企業だから余力がある」「フィールドホッケーの元選手で現役レーシングドライバーの豊田社長がスポーツ好きだからできること」と世間は特別視しがちだが、スポーツの価値を認めていなければ、すべての部を維持し続けるという判断にはならない。そこは改めて認識すべき点だ。

総勢600人弱の中には、東京五輪に内定している男子マラソンの服部勇馬、女子ソフトボールの山崎早紀、後藤希友らが含まれている。が、目下、彼らが注力しているのは、五輪アスリート増ではなく、セカンドキャリア支援の充実だ。スポーツで培った人間力や経験値を還元してもらえれば、会社にとってもプラスだし、アスリートのステイタスも上がる。そんな思惑が背景にあるのだ。

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